日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
介護保険施設に入所する認知症高齢者のBPSDに及ぼす生活の質(QOL)の影響
鈴木 みずえ服部 英幸福田 耕嗣大城 一猿原 孝行古田 良江阿部 邦彦金森 雅夫
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2017 年 54 巻 3 号 p. 392-402

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抄録

目的:本研究の目的は介護保険施設における認知症高齢者の認知症の行動・心理症状(BPSD)に及ぼす生活の質(QOL)の影響を明らかにすることである.方法:介護保険施設に入所する認知症高齢者のADL(Katz),Mini-mental State Examination(MMSE),Neuropsychiatric Inventory(NPI),Quality of life inventory for elderly with dementia(QOLD)を評価した.結果:対象者は男性121名,女性396名の合計517名,介護老人福祉施設200名(38.7%),介護療養型医療施設91名(17.6%),介護老人保健施設226名(43.7%)で,平均年齢85.18±7.13歳であった.NPIに関しては,介護療養型医療施設と介護老人保健施設では下位尺度の興奮が高く,介護老人福祉施設では無為・無関心が高かった.NPIの各項目を目的変数とした重回帰分析においては,QOLDの対処困難行動のコントロールは有意な抑制因子になっていたものが多かった.結論:NPIの各項目を目的変数とした重回帰分析において,QOLDのいずれかの下位尺度と有意な関係がみられた.以上のことからQOLの維持向上に対するケアがBPSDを緩和することが示唆された.

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© 2017 一般社団法人 日本老年医学会
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