2017 年 54 巻 4 号 p. 491-498
地域医療は,人々がいつまでも安心して暮らし続けることができる地域社会を支える重要な要素の一つである.しかも,世界で最も高齢化が進んでいる我が国において老年医学が担う役割は大きい.日本の超高齢社会の未来像ともいえる石川県穴水町の現状をもとに,様々な問題とそれらへの取り組みについて考えてみたい.地域医療構想によって病床数削減が進む過程において,在宅医療や地域包括ケアシステムの重要性が高まっている.その一方で,在宅医療は救急医療と密接に連携する必要があり,救急医療体制の再構築も求められている.また,地域包括ケアシステムが掲げる医療・介護・生活支援の一体化が推し進められる一方で,訪問看護師不足や在宅における医療安全対策,在宅・施設看取りにおける在宅トリアージなど,課題も多く残されている.さらに,高齢者の貧困に起因するセルフネグレクトの問題も目を背けるわけにいかず,高齢者の権利の保護と意思決定支援の重要性が増していくものと思われる.2025年問題を目前に控え,急務となる多くの課題について考察した.