日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
急性期病院におけるフレイルを有する高齢入院患者の特徴
山口 晃樹平瀬 達哉小泉 徹児井口 茂
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2018 年 55 巻 1 号 p. 124-130

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抄録

目的:フレイルを有する高齢者を早期に発見し,適切な介入に繋げることは健康寿命を延伸する上で重要である.一方,急性期病院においても入院患者の高齢化は顕著であり,フレイル対策は重要であると考えられるが,この点を調査した研究は少ない.そこで本研究では,急性期病院におけるフレイルを有する高齢入院患者の有症率とその特徴を明らかにすることを目的とした.方法:対象は,在宅より急性期病院に入院した65歳以上の患者198名(76.1±7.1歳)とした.フレイルは基本チェックリストを用いて評価し,該当合計数が0から6項目である対象者を非フレイル群,7項目以上である対象者をフレイル群と定義し,フレイルの有症率を算出した.評価項目は,年齢,性別,診療科,持参薬の数,栄養状態(Alb値),Body Mass Index,入院期間中の合併症の有無とし,各評価項目を2群間で比較した.また,フレイル群と非フレイル群の基本チェックリストの項目別該当者数を調査した.結果:非フレイル群は111名(56.1%),フレイル群は87名(43.9%)であった.群間比較の結果,フレイル群では非フレイル群よりも年齢が有意に高く,女性が多かった.また,フレイル群ではAlb値が有意に低く,入院期間中に合併症を発症している人数も多かった.基本チェックリストの該当項目では,フレイル群は社会参加,運動機能,口腔,閉じこもり,抑うつの項目で5割以上が該当していた.結論:急性期病院ではフレイルを有する高齢入院患者は多く,フレイル対策の重要性が明らかとなった.また,フレイルを有する高齢入院患者は高年齢や女性ならびに低栄養状態であり,入院期間中に合併症を発症するリスクが高い可能性が示唆された.そして,このような高齢者には運動機能,精神心理面,口腔機能,社会参加といった多面的な評価や介入が必要であることが示唆された.

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© 2018 一般社団法人 日本老年医学会
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