日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
大都市旧ニュータウン在住高齢者への死後を含めた事前指示に関する意識調査と啓発介入効果
赤津 裕康間辺 利江竹尾 淳川出 義浩木村 雄子近藤 麻央伊藤 禎芳長野 弘季野崎 耀志郎土井 愛美正木 克由規田中 創始兼松 孝好小嶋 雅代明石 惠子岩田 彰鈴木 匡木村 和哲浅井 清文大原 隆弘
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2018 年 55 巻 3 号 p. 358-366

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抄録

目的:今後の超高齢社会を乗り切っていく重要な1つの方策は意識改革である.その要になるのはヘルスケア・メディケーションを行いつつ自らの最終ゴールを見つめる,即ちアドバンスケアプランニング(Advance care planning:以下ACPと略す)と事前指示(Advance directive:以下Adと略す)を行うことである.また,パーソナルヘルスレコード(Personal Health Record:以下PHRと略す)の匿名開示,病理解剖はあまり言及されていない.しかし,死後のことも事前に考え,意向を聞いておく環境整備も必要である.この死後対応を含めたAd/ACPの啓発・浸透が国民の意識改革にもなっていく.本研究は地域住民の意識をアンケート形式で把握し,講演(啓発活動)での変容を捉えることを目的とした.方法:高齢化の進む大都市旧ニュータウン住民へAd/ACP啓発講演を行い,その前後での意識調査を行った.意識調査はアンケートでの自記式4択を主体に末期認知症になった状況を主に想定した6大項目,38問を設けた.結果:参加者は35名(男7名,女22名)で40歳代~80代以上で70歳代が25名であった.途中退出者が数名発生したため,前後変容に関しては,統計的解析は不可能であったが意識変容の傾向は得られた.特に死後の対応(献体)に関しては有意差をもった意識変化を認めた.また蘇生・延命の希望者数と救急搬送希望者数に乖離を認めた.結論:医療行為への希望・不安はその情報量に加え,置かれた状況でも変容する.今回の意識調査で,死後の社会貢献意識に講演前後で変化が観られた.また蘇生・延命と救急搬送は別物と捉える地域住民が多い点も明らかとなった.今後のAd/ACPの普及,意識改革では,この点を念頭においた地道な活動と医療・介護者,地域の方々,家族,本人との連携が必要である.

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© 2018 一般社団法人 日本老年医学会
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