日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
外来での心房細動簡易スクリーニング―脈拍間隔変動を解析する手法を応用して―
岡部 慎一佐藤 明善粕谷 泰道杉山 耕一遠藤 聡光成 誉明鎌田 健一山形 勝片柳 達也
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2018 年 55 巻 3 号 p. 402-410

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抄録

目的:心原性脳塞栓症の主原因である心房細動は,医療機関一般外来において,充分に検知されているとは言えない.心房細動は加齢とともに罹患率が上昇し,人口の高齢化により将来的に増加が予想されている.そこで,当院外来において,パルスオキシメーターを応用した脈拍解析機器による心房細動スクリーニングを行い,脳塞栓予防へ繋げているので,その有用性を検討した.方法:2014年救急患者以外の外来初診および通院患者(延べ患者数:50,875人,実患者数:16,356人)の中で,主に午後受診の65歳以上患者を中心に,心房細動スクリーニングを行った.実患者数のうち5,013人(30.6%),8,656回に施行された.スクリーニングに使用した機器は,脈波情報を取得するパルスオキシメーターと,脈波解析専用アプリを搭載したタブレットである.両機器はBluetooth通信で送受信する.専用アプリでは,脈拍間隔変動が大きいものを心房細動と判断するアルゴリズムを採用した.機器の心房細動検知感度も調べた.結果:心房細動の新規診断患者が40人,未治療の既知心房細動再確認患者が16人で,計56人において,抗凝固療法が検討・導入され,スクリーニングが有用と判断された.スクリーニング実施者の1.1%,外来実患者数の0.34%であった.平均年齢は76.9±7.7歳,CHADS2スコア2以上が67.9%,半数で過去に不整脈指摘があり,初診患者の割合は37.5%であった.心房細動に対する専用アプリの感度は89.7%であった.結論:本研究の手法で,脈拍間隔不整を解析することにより,多くの無症候性心房細動患者が発見された.心房細動患者の外来スクリーニングの一方法として有用である可能性が示された.

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© 2018 一般社団法人 日本老年医学会
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