日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
運転不安を有する高齢運転者の身体機能の特徴―福岡那珂川研究―
古瀬 裕次郎池永 昌弘山田 陽介武田 典子森村 和浩木村 みさか清永 明檜垣 靖樹the Nakagawa Study Group
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2020 年 57 巻 4 号 p. 475-483

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抄録

目的:高齢運転者における,運転不安の有無による体力の相違,ならびに運転不安と身体機能の関連を明らかにする.方法:現在運転習慣があると回答した523名(男性:353名,女性:170名)を対象に,身体機能検査として握力,膝伸展力,timed up and go(TUG),チェアスタンド,開眼片足立ち,垂直跳び,ファンクショナルリーチ,通常歩行速度,最大歩行速度,さらに,運転不安,視力,聴力の不良及び既往歴に関するアンケート調査を実施した.運転不安に関しては「慣れた道の運転に不安があるか」を問い,「不安有り」「不安無し」で評価した.視力及び聴力それぞれにおいては,日常生活に支障があるかどうかを問うた.結果:運転不安群は,不安なし群に比して年齢,視力の不良,聴力の不良,心血管疾患の既往が有意に高値を示した(P<.05).交絡因子(性別,年齢,視力の不良,聴力の不良,心血管疾患の既往)を調整して比較したところ,運転不安群は不安なし群に比して,TUG及び最大歩行速度が有意に劣っていた(P<.05).運転不安に関連する因子をロジスティック回帰分析によって検討したところ,最も関連が強い因子は視力の不良(Odds Ratio[OR]:5.56,P<.01)であり,続いて聴力の不良(OR:3.03,P<.01),TUG(OR:1.46,P<.01),心疾患の既往(OR:3.12,P=.04)であった.結論:高齢運転者のうち運転に不安を有する者は,不安を有しない者に比して低体力(歩行機能低下)であることが示唆された.また,歩行機能低下のみならず,視力の不良,聴力の不良,ならびに心疾患の既往が,それぞれ運転不安者の身体的特徴であることが示唆された.

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© 2020 一般社団法人 日本老年医学会
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