日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
高齢者が看病や世話を提供することは,提供した本人の健康維持につながるのか?
黒岩 祥太北 啓一朗黒岩 麻衣子吉田 樹一郎南 眞司山城 清二
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2021 年 58 巻 2 号 p. 235-244

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抄録

目的:高齢者が配偶者などに対して看病や世話を提供することと,提供した本人の3年後の健康維持との関連を明らかにすることを目的とした.方法:分析対象は2014年及び2017年に富山県南砺市で65歳以上の高齢者全員に対して実施された「日常生活圏域ニーズ調査」への回答者である.それぞれ79.3%,78.5%の回収を得た.そのうち不明値がなく,2014年調査で介護・介助を受けていないと回答し,かつ2017年調査にも回答もしくは調査時点までに死亡が確認された6,088人を分析対象とした.アウトカムである健康維持の状況に関しては,2017年調査で介護・介助を受けていないと回答している者を健康維持,何らかの介護を受けていると回答している者及び死亡が確認された者を併せて健康喪失と定義した.そして回答者が看病や世話を提供する相手が具体的に誰であるのかを把握しつつ,その有無及びそこに配偶者が含まれているのか否かと3年後の健康維持がどのように関連しているのかを,多重ロジスティック回帰分析を用いて分析した.結果:基本的属性や健康と生活機能など各種指標を調整したとしても,男性の場合,看病や世話をする相手がいないことに対して,看病や世話を提供する相手に配偶者を含む場合と3年後の健康維持とのオッズ比は1.67(P=0.004),看病や世話を提供する相手に配偶者を含まない場合とのオッズ比は1.62(P=0.052)であった.一方女性の場合,それぞれ1.42(P=0.079),1.44(P=0.045)であった.結論:男性では看病や世話を提供する相手に配偶者を含む場合,女性では看病や世話を提供する相手に配偶者を含まない場合で,健康維持に対してポジティブな傾向を有することが示唆された.

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