日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
在宅療養する高齢認知症患者の睡眠障害の実態と介護者による障害への気づきに関する要因
樋上 容子竹屋 泰竹村 幸宏小黒 亮輔勝眞 久美子松川 直道樂木 宏実神出 計
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 59 巻 2 号 p. 200-208

詳細
抄録

目的:在宅療養する高齢認知症患者の睡眠を量的に示し,睡眠パラメータと本人の訴えや家族介護者による観察と比較し,睡眠障害の同定に関連する要因を探索した.方法:2018年5月~2019年1月に,大阪府下の老年内科 物忘れ外来や訪問看護ステーションを利用する認知症患者16名(84.1±4.7歳,男性6名(37.5%),軽度認知症者10名(62.5%))と家族介護者を対象とした.患者の臨床情報や睡眠への主観,家族介護者のZarit介護負担度や患者の睡眠(中途覚醒や離床)への気づきについて収集した.1週間の夜間の睡眠パラメータの測定には非着用型アクチグラフを用いた.睡眠パラメータと各変数の関連はスピアマン順位相関係数を用いて分析し,睡眠パラメータと患者の主観や家族介護者の観察を比較し,睡眠障害を同定する要因を検討した.結果:1週間の夜間の平均睡眠パラメータは,睡眠効率77.2±9.3%,睡眠時間442.3±99.9分,睡眠潜時18.2±15.8分,中途覚醒時間105.1±69.7分,離床回数4.6±3.8回,終夜の最大離床回数は29回であった.睡眠効率と認知症の罹患期間に有意な正の相関を認めた(r=0.53,p=0.046)が,認知症重症度やZarit介護負担度とは相関は見られなかった.本人の睡眠への訴えと睡眠効率(75%)との一致度は30.7%であり,家族介護者による患者の夜間睡眠への気づきは,患者に失禁があること(p=0.024)と認知症重症度が高い(p=0.027)ことに有意に関連していた.結論:在宅療養する高齢認知症患者は中途覚醒や離床といった睡眠障害を認める例が多いが,本人の訴えとの一致度は低く,認知症が進行してから家族介護者に認知にされる可能性がある.測定機器を用いるなどして認知症の進行と関与すると言われる睡眠の問題を早期に同定し対応していく必要性が示唆された.

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top