2022 年 59 巻 2 号 p. 209-218
目的:家族介護者からみた医療介護福祉職らによるケアのプロセス評価に,訪問看護サービス利用の有無という違いが影響するかを検討するために,両者の関連性について横断的に検証した.方法:対象者はA県3自治体で介護認定を受けて1年以上になり,慢性症状を抱え在宅療養している人を介護する40~74歳の家族介護者で,2020年11~12月に介護支援専門員を通じて質問票を配布した.アウトカムは,慢性症状を抱える人とその家族介護者に対する多職種ケアのプロセスを,家族介護者が定量的に評価する日本語版IEXPAC CAREGIVERS(以下,当尺度)の総合得点と各下位尺度得点とした.当尺度は評価対象を多職種とし,家族介護者が多職種とかかわるなかで経験した具体的事象を量的に測定する.下位尺度は「患者に焦点」と「介護者に焦点」である.要因を訪問看護の利用の有無,共変量を家族介護者の社会経済的要因や訪問診療の有無等とした.当尺度得点を中央値で2群化し,2項ロジスティック回帰分析で解析した.結果:解析対象者は566人で,家族介護者の年齢中央値62歳,女性73.3%であった.訪問看護サービスの利用があったのは86ケース(15.2%)であった.ロジスティック回帰分析の結果,訪問看護サービス利用の有無(なし=参照)と当尺度の総合得点の高低(低群=0,高群=1)とは有意に関連した(オッズ比3.02;95%信頼区間1.54~5.91).各下位尺度得点では,「患者に焦点」では有意差を認めた一方,「介護者に焦点」では有意差を認めなかった.結論:訪問看護サービスが導入された家族介護者は,導入していない家族介護者と比べて当尺度の総合得点ならびに下位尺度の「患者に焦点」得点が有意に高かった.この結果は,訪問看護師が在宅療養する患者のケアにかかわる多職種協働の中核として,その役割期待に応えている可能性を示唆した.