日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
高齢者におけるDigital Trail Making Peg testのパフォーマンスと認知機能との関連性
井上 大樹永田 康喜立岡 光臨薛 載勲尹 之恩辻 大士大藏 倫博
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2022 年 59 巻 3 号 p. 331-338

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抄録

目的:Trail Making Testとペグ移動テストを組み合わせ,かつ自動測定を可能としたDigital Trail Making Peg test(DTMP)のパフォーマンスと高齢者の認知機能との関連性を明らかにする.方法:2020年度に実施した健診事業に参加した地域在住高齢者203名(76.4±5.1歳)を対象とした.認知機能評価にはファイブ・コグ検査を使用し,5要素合計得点(認知機能得点)で全般的な認知機能を評価した.DTMPは完了時間,エラー回数,パフォーマンスのばらつきを示す個人内変動(平均値からのばらつきを表す変動係数,Coefficient of Variation:CV;パーセンタイルの差に基づく値から定義した要素間変動,Inter-Element Variability:IEV)を測定した.各変数間の関連性の検討にSpearmanの順位相関係数(ρ)を算出した.また,従属変数に認知機能得点,独立変数にDTMPの完了時間,エラー回数,CV,IEVを同時投入し性,年齢,教育年数,body mass index,既往歴,抑うつ度,身体機能を調整した重回帰分析をおこなった.結果:認知機能得点との順位相関係数は完了時間:ρ = -0.479(P < 0.01),エラー回数:ρ = -0.068(P = 0.332),CV:ρ = 0.085(P = 0.225),IEV:ρ = -0.316(P < 0.01)であった.重回帰分析の結果,完了時間(β = -0.566),CV(β = 0.164),IEV(β = 2.736)が認知機能得点と有意に関連した.結論:DTMPの完了時間が短いほど全般的な認知機能が良好であることが確認された.一方,個人内変動であるCVとIEVは,値が小さいほど個人内変動が小さいといった一貫した結果が確認されなかった.

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© 2022 一般社団法人 日本老年医学会
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