日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
バーチャル・リアリティデバイスを利用した認知機能検査の有用性の検討
水上 勝義田口 真源纐纈 多加志佐藤 直毅田中 芳郎岩切 雅彦仁科 陽一郎Iakov Chernyak唐木 信太郎
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2023 年 60 巻 1 号 p. 43-50

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抄録

目的:認知症予防対策は喫緊の課題であり,軽度の認知機能の異常や軽度認知障害(mild cognitive impairment,MCI)を早期に発見できる簡便な認知機能評価法の開発が求められている.我々はバーチャル・リアリティデバイスを用いた認知機能検査(virtual reality device- examination以下VR-E)を開発した.本研究はその有用性の検証を目的とした.方法:対象は認知機能正常,軽度認知障害,認知症を含む77名(男性29名,女性48名,平均年齢75.1歳)である.基本情報を収集後,Clinical Dementia Rating(CDR)により認知症の重症度を評価した.全対象にVR-EとMini Mental State Examination(MMSE)を実施し,MMSEが20点以上の場合Montreal Cognitive Assessment-Japanese version(MoCA-J)も実施した.結果:全体77名のうちCDR 0群が31名,CDR 0.5が26名,CDR 1が14名,CDR 2が5名,CDR 3が1名であった.VR-Eの得点は,CDR 0;0.77±0.15(平均値±標準偏差),CDR 0.5;0.65±0.19,CDR1;0.24±0.23,CDR2;0.15±0.15であり,CDR 0,0.5,1~3の3群間に有意差を認め,多重比較でもCDR0と0.5,CDR0.5と1~3に有意差を認めた.CDR 0 vs 0.5におけるMMSE/MoCA-J/VR-EのAUCの値は,0.85,0.80,0.70,CDR 0.5 vs 1~3のAUCの値は,0.89,0.92,0.90であり,VR-Eは正常とMCIの鑑別や,MCIと認知症の鑑別に有用なツールであることが示唆された.VR-Eの実施時間はおよそ5分であり,ほとんどの被験者は音声ならびに文字ガイダンスの指示に従って一人で検査の遂行が可能であった.ただし12名は眼疾患,メニエール症候群,認知症による理解度低下のため実施困難だった.結論:VR-Eは簡便に実施でき,また認知機能検査としても有用である可能性が示唆された.

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