日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
免疫抑制療法開始後早期に血管免疫芽球性T細胞リンパ腫を併発したRS3PE症候群
石原 成美青田 泰雄永田 大智栽原 麻希須藤 ありさ岡部 雅弘若林 邦伸横山 智央後藤 明彦
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2023 年 60 巻 1 号 p. 60-66

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抄録

症例は75歳の男性.発熱,両下腿浮腫,関節痛が出現し当院膠原病内科受診.四肢末梢関節炎を呈し,リウマトイド因子・抗CCP抗体は陰性であることからRS3PE症候群と診断.悪性腫瘍検索を行ったが明らかな悪性所見は認めなかった.ステロイド(Triamcinolone),Methotrexate(MTX),Tacrolimus(TAC)にて加療開始後,関節症状の改善を認めるも,5カ月後より全身のリンパ節腫大を認めた.リンパ節生検にてother iatrogenic immunodeficiency-associated lymphoproliferative disorders(OI)- lymphoproliferative disorders(LPD)/angioimmunoblastic T-cell lymphoma(AITL)と診断.MTXを中止して経過をみたがリンパ節縮小を認めず,全身倦怠感も強いためAITLに対して,化学療法(CHOP療法)を開始したところ速やかに全身症状は改善した.RS3PE症候群は,高齢者を中心に関節症状をきたし,リウマトイド因子陰性で,手背側背の対称性圧痕浮腫を伴う多発滑膜炎である.10~40%に悪性腫瘍の合併があり,腫瘍随伴症候群としても注目されている.本症例ではRS3PE症候群診断時,悪性腫瘍検索を行うも悪性疾患を示唆する所見は認めなかったが,MTX,TAC投与開始後に急激なリンパ節腫大を呈し病理はAITLの所見であった.基礎疾患として,AITLがあり,随伴症状としてRS3PE症候群を呈した可能性とRS3PE症候群に対する治療関連OI-LPD/AITLの可能性が考慮される.適切な診断,治療のために,本疾患の十分な認知を要すると考え報告する.

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© 2023 一般社団法人 日本老年医学会
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