2023 年 60 巻 4 号 p. 382-389
目的:医療療養病棟における内服薬剤について「慎重な投与を要する薬物」(PIMs)の使用,嚥下機能とADL区分を指標にした薬剤数について検討した.方法:2019年11月から12カ月間に連続して入棟した124症例(男性58名,女性66名)を対象に,内服薬剤を療養病棟に入棟時から2021年10月まで前向きに調査した.自施設からの入棟例は急性期病棟に入院時の薬剤についても検討した.療養病棟での栄養経路とADL区分を定量的に評価し,それぞれの内服薬剤数を統計解析した.結果:内服薬剤数の平均は入院時5.8剤,入棟時4.4剤,退棟時4.8剤であった.内服薬剤の約3割がPIMsに該当し,抗血栓薬(抗血小板薬,抗凝固薬),利尿薬,糖尿病薬,緩下剤の酸化マグネシウム,睡眠薬・抗不安薬,抗精神病薬が多かった.このうち療養病棟で中止したものは酸化マグネシウム,抗精神病薬,睡眠薬・抗不安薬が多かった.内服薬剤におけるPIMsの割合は,入院時35.1%,入棟時28.8%,退院時24.3%と有意に低下した(P<0.01).退棟時の内服薬剤数は,栄養経路別に経口摂取で5.5剤,経腸栄養で3.6剤,末梢・中心静脈栄養で0.7剤,ADL区分別にADL区分1で6.0剤,ADL区分2で5.8剤,ADL区分3で3.8剤となった.結論:PIMsの使用は,療養病棟から退棟時には入院時,入棟時と比較して減少したが,薬剤の種類により調整の内容は異なっていた.嚥下機能およびADL区分の低下により,内服薬剤数は少なくなることが示された.