日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
60 巻, 4 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
目次
尼子賞受賞講演
老年医学の展望
  • 西影 星二, 廣田 勇士, 小川 渉
    2023 年 60 巻 4 号 p. 317-330
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    本邦では高齢の肥満者の割合が増加しており,高齢者の肥満・肥満症患者への治療の重要性は高まっている.日本肥満学会は,2000年に世界に先駆けて「肥満に起因ないし関連して発症する健康障害を合併するか,その合併が予測される状態」を肥満症として定義し,BMIのみによって判定される「肥満」と治療医学の対象としての「肥満症」を明確に区別した.現在,本邦における肥満の定義は,脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で,BMI≧25 kg/m2のものと定めており,肥満症の定義は,「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか,その合併が予測され,医学的に減量を必要とする疾患」と定めている.高度な肥満においては,高度ではない肥満と合併する健康障害などで異なった特徴を持つため,BMI≧35 kg/m2を高度肥満と定義しており,高度肥満を伴った肥満症を高度肥満症と定義している.減量目標として,肥満症では3~6カ月で現体重の3%以上を目標としている.高度肥満症では3~6カ月で現体重の5~10%を減量目標とし,合併する健康障害に応じて目標設定を行う.

    高齢者の肥満症は若年者と同じ基準で診断されるが,加齢による身長の変化や浮腫などの合併によりBMIが体脂肪量を正確に反映しないことが少なくないため,注意が必要である.高齢者では高度な肥満でなければ,高齢者の肥満と心血管,認知症,死亡リスクとの関係はまだ明らかではなく,BMI高値の方が,死亡リスクがむしろ減少するobesity paradoxがみられる場合がある.一方で,高齢者でも内臓脂肪量の増加と死亡リスクには関連があるとされている.日本老年医学会はそうした高齢者肥満症特有の認知症やADL低下といった視点を取り入れた「高齢者肥満症診療ガイドライン2018」を発刊した.日本肥満学会が2022年に発刊した「肥満症診療ガイドライン2022」では,「高齢者の肥満と肥満症」の章を新たに設けた.高齢者の肥満・肥満症では,サルコペニア肥満をきたしやすいため,肥満症治療においても個々のリスクを考慮した上で減量のための食事療法や運動療法を行う必要がある.

    減量・代謝改善手術の経験豊富な施設においては,減量・代謝改善手術は高齢者高度肥満症患者の治療選択肢のひとつとして考慮され,今後高齢者肥満症では,さらに個別化した肥満症診療が望まれる.

  • 木棚 究, 山賀 亮之介
    2023 年 60 巻 4 号 p. 331-337
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    在宅医療における認知症患者の割合は高く,診断前から終末期まで様々な段階の患者が存在する.そのため,在宅医療に関する医療従事者は,認知症の知識が必須であるが,認知症特有の問題点だけでなく,在宅医療ならではの問題点もあれば,在宅医療ならではの対処法もある.すなわち,症状を自分で言えず,限られた検査で対応せざるを得ない場面も多いが,生活環境,状況から推測し,多職種・介護者と連携し,その場に応じた対応は元より,さらに先々のことを見据えた対応も行っていくべきである.しかし,併存疾患や生活環境,問題点など患者によって様々であり,体系化しにくい分野であり,エビデンスに乏しい.そのため,今後さらなる研究が望まれる.

特集
内科医が知っておきたい高齢者皮膚疾患
原著
  • 美﨑 定也, 村山 洋史, 杉山 美香, 稲垣 宏樹, 岡村 毅, 宇良 千秋, 宮前 史子, 枝広 あや子, 本川 佳子, 粟田 主一
    2023 年 60 巻 4 号 p. 364-372
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    緒言:高齢者の転倒を予防するためには,高齢者の状態像を多角的に捉える必要がある.本研究の目的は,地域在住高齢者を身体機能,精神機能,認知機能,口腔機能および併存疾患を基にクラスター分析により類型化し,分類した群と転倒経験との関連を検討することとした.方法:2015年に東京都A区において実施された,介護予防に関する調査のデータを用いた.対象者は,要介護認定を受けていない65歳以上の地域在住高齢者132,005名であった.調査項目は,身体機能,精神機能,認知機能,口腔機能,併存疾患数,過去1年以内の転倒経験等であった.解析は,クラスター分析を行った後,分類した群を独立変数,転倒経験を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.結果:78,917名(59.8%)から回答を得て,70,746名(53.6%)を最終的な解析対象とした.平均年齢は73.6±6.0歳,男性が44.9%であった.クラスター分析により,全体良好群(37,797名;53.4%),メンタルヘルス不良群(10,366名;14.7%),身体機能中程度不良群(13,461名;19.0%),全体不良群(9,122名;12.9%)の4群に分類した.社会人口学的変数,健康行動関連変数,転倒不安感で調整したロジスティック回帰分析の結果,全体良好群を参照とした場合の転倒経験のオッズ比は,メンタルヘルス不良群で1.44(95%信頼区間:1.34~1.53),身体機能中程度不良群で1.54(1.44~1.65),全体不良群で2.52(2.34~2.71)であった.結論:転倒のリスク因子である身体機能,精神機能,認知機能,口腔機能,併存疾患により地域在住高齢者を特徴的な4群に類型化することができた.転倒しやすさも異なることから,転倒予防対策はこうした類型化を基に考えていくことが有効と示唆された.

  • 高取 克彦, 松本 大輔, 山崎 尚美, 宮崎 誠, 文 鐘聲
    2023 年 60 巻 4 号 p. 373-381
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    目的:地域在住高齢者における主観的年齢と高次生活機能および新規要介護状態の発生との関係を明らかにする.方法:2016年に奈良県A町の地域在住高齢者を対象に郵送式調査を行い,2019年に追跡調査が可能であった2,323名を分析対象とした.主観的年齢の評価は「気持ちの年齢についてお答えください」という問いに対して「年相応」「実際の年齢より若い」「実際の年齢より上である」の選択肢を設定した.その他の評価には,併存疾患数,高次生活機能(老研式活動能力指標およびJST版活動能力指標),抑うつ(Geriatric Depression Scale-5),自己効力感(General Self-efficacy Scale),運動定着(週1回以上の運動実施)などを聴取し,追跡調査時にはこれらに加え,対象者の新規要介護認定の発生状況についても調査した.データ解析は主観的年齢の分類によるベースライン時および追跡調査時の項目間比較および新規要介護状態の発生との関係を解析した.項目間の比較には一元配置分散分析およびχ二乗検定を行い,新規要介護認定への影響因子はFisherの正確検定および二項ロジスティック回帰分析を用いて解析した.結果:ベースライン時において「実際の年齢より上」と感じている者は高次生活機能,一般性自己効力感が有意に低く,他群に比較して週1回以上の運動を行っている者が少なかった.また「実際の年齢より上である」と感じている者は他群に比較して新規要介護発生が多く,反対に「実際の年齢より若い」と感じている者では少なかった.新規要介護認定を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果では,他の因子を調整しても「実際の年齢より上」と感じることが独立したリスク因子であった(OR=3.33,95%CI:1.02~10.94,p=0.047).結論:地域在住一般高齢者において自覚的な年齢が暦年齢を超える者は,将来の高次生活機能を低下させ,要介護リスクを増加させる可能性がある.

  • 大塚 博之, 河上 祐一郎, 篠﨑 雅人, 川畑 博, 山中 太郎
    2023 年 60 巻 4 号 p. 382-389
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    目的:医療療養病棟における内服薬剤について「慎重な投与を要する薬物」(PIMs)の使用,嚥下機能とADL区分を指標にした薬剤数について検討した.方法:2019年11月から12カ月間に連続して入棟した124症例(男性58名,女性66名)を対象に,内服薬剤を療養病棟に入棟時から2021年10月まで前向きに調査した.自施設からの入棟例は急性期病棟に入院時の薬剤についても検討した.療養病棟での栄養経路とADL区分を定量的に評価し,それぞれの内服薬剤数を統計解析した.結果:内服薬剤数の平均は入院時5.8剤,入棟時4.4剤,退棟時4.8剤であった.内服薬剤の約3割がPIMsに該当し,抗血栓薬(抗血小板薬,抗凝固薬),利尿薬,糖尿病薬,緩下剤の酸化マグネシウム,睡眠薬・抗不安薬,抗精神病薬が多かった.このうち療養病棟で中止したものは酸化マグネシウム,抗精神病薬,睡眠薬・抗不安薬が多かった.内服薬剤におけるPIMsの割合は,入院時35.1%,入棟時28.8%,退院時24.3%と有意に低下した(P<0.01).退棟時の内服薬剤数は,栄養経路別に経口摂取で5.5剤,経腸栄養で3.6剤,末梢・中心静脈栄養で0.7剤,ADL区分別にADL区分1で6.0剤,ADL区分2で5.8剤,ADL区分3で3.8剤となった.結論:PIMsの使用は,療養病棟から退棟時には入院時,入棟時と比較して減少したが,薬剤の種類により調整の内容は異なっていた.嚥下機能およびADL区分の低下により,内服薬剤数は少なくなることが示された.

  • 瀧澤 俊也, 小原 さおり, 佐藤 史朋, 高橋 若生
    2023 年 60 巻 4 号 p. 390-399
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    目的:高齢進行期パーキンソン患者においてウェアリングオフは解決すべき課題であり,特に朝に見られるモーニングオフは患者が一日の生活を開始する上で大きな支障となる.我々は夕食後投与によるサフィナミド50 mg及び100 mgのモーニングオフの改善効果,UPDRS Part IIIの改善効果について検討した.方法:本研究は2020年4月1日から2021年7月31日の期間に,ウェアリングオフ現象を有しサフィナミド50 mgないし100 mgを夕食後に投与したPD患者30例を対象とした.診療録における診察所見,症状日誌の情報に基づき,モーニングオフの改善効果の有無を後方視的に解析した.結果:本研究は,75.8±7.5歳と高齢のパーキンソン患者30例を対象とした点が従来の報告と異なる.夕方のサフィナミド投与で,終日では投与開始8週から,午前では4週(100 mg)からオン時間の有意な延長を認めた(12週以降で30分延長).オフ時間は,終日・午前(すなわち,モーニングオフ)において4週から有意な短縮を認めた(12週以降で1時間の短縮).UPDRS Part IIIの合計スコアは,12週から1ポイントの有意な改善を認めた.いずれの指標でも,サフィナミド50 mgと100 mgの2群間では有意差を認めなかった.ジスキネジアを含めた副作用は認めなかった.非運動症状では,不安感・疼痛・気分の落ち込みの改善傾向を認めた.結論:今回サフィナミド50 mg・100 mgの夕方投与がモーニングオフの改善効果を示したことは,高齢進行期パーキンソン患者の新たな治療戦略になり得ると考えた.

  • 太場岡 英利
    2023 年 60 巻 4 号 p. 400-405
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    目的:本研究目的は,OHAT各項目により評価した口腔状態と誤嚥性肺炎との関係を明らかにすることである.方法:社会福祉法人香南会の施設利用者809名を対象とした.口腔内の評価はOral Health Assessment Tool(以下OHATと略す)を用いた.OHATの調査項目は口唇,舌,歯肉・粘膜,唾液,残存歯,義歯,口腔清掃,歯痛の8項目である.2021年度の誤嚥性肺炎発症の有無について施設毎に情報を収集した.誤嚥性肺炎発症の有無を目的変数,OHATの各項目を説明変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った.解析はR version 4.0.2を用いて行い,有意水準は5%未満とした.結果:誤嚥性肺炎発症とOHATとの間に再現性のある有意な関連性は認められなかった.その他,誤嚥性肺炎を発症した群では男性の比率が有意に高かった.結論:誤嚥性肺炎発症とOHATに関連性は認められなかった.

  • 碩 みはる, 永井 久美子, 玉田 真美, 神﨑 恒一
    2023 年 60 巻 4 号 p. 406-413
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    目的:新型コロナウィルス感染症拡大の影響から,当院もの忘れセンターでは受診者数が大幅に減少した.一方で感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令以降,初診患者に妄想を訴える患者が多い印象を持った.そこで初診患者のうち妄想性障害と診断された患者の特徴を感染拡大前後で比較検討した.方法:2017年1月~2021年12月の間に杏林大学病院もの忘れセンターを受診した,65歳以上の初診患者1,884名を調査対象とし,コロナ禍前後の診断名の比較を行った.そのうち,妄想性障害と診断した17名において,第1回緊急事態宣言発令前と発令後に分けて,対象患者背景,高齢者総合機能評価の特徴について調べた.結果:コロナ前後で初診患者数は減少したが認知機能障害,精神障害の出現頻度は,コロナ前後でほぼ同様であり,有意差は認められなかった.一方で第1回緊急事態宣言発令後の初診患者において,妄想性障害と診断した患者数は,発令前7名に対して,緊急事態宣言発令後は10名,割合にして約3倍に増加した.それらの患者では発令後患者でVitality Indexが有意に低く(p=0.047),また精神疾患の既往が無い方が多かった(p=0.036).また発令後患者では,70%が妄想の訴えが確認されてから1年以内にもの忘れセンター初診外来を受診していた.結論:第1回緊急事態宣言発令後,もの忘れ外来初診患者において,妄想性障害を急性に発症する高齢者が増加した.精神疾患の既往が無い高齢者が比較的急な経過で妄想を呈して受診するケースが増加した.新型コロナウィルス感染症拡大と緊急事態宣言による行動制限は,高齢者の精神状態に影響を及ぼしたと考えられ,高齢者の健康状態・精神状態に注意する必要がある.

  • 鈴木 みずえ, 内藤 智義, 富樫 千代美, 稲垣 圭吾, 金盛 琢也, 原田 あけみ
    2023 年 60 巻 4 号 p. 414-423
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    研究目的:本研究の目的は,身体治療を受ける認知症高齢者に対し,ミトン装着低減を目的にTwiddle muffを活用したケアに関わったケアスタッフにアンケートとインタビュー調査を行い,スタッフによる主観的効果と安全性を明らかにすることである.方法:2022年1月からTwiddle muffを使用したA病院のケアスタッフを対象にアンケートとZoomによるインタビュー法を用いた調査を実施した.結果:対象者は19名,職種は看護師16名(84.2%)と理学・作業療法士3名(15.8%)であった.対象者の経験年数の平均は16.9±6.7歳,Twiddle muff活用人数の平均6.0±3.2名であった.アンケート結果からのTwiddle muffの効果は,「ミトン装着の解除・低減」19名(100.0%),次いで「BPSDの緩和」11名(57.9%)であった.インタビューを質的に分析した結果,カテゴリーはスタッフの感じたTwiddle muffの活用による効果とTwiddle muffを活用できる認知症高齢者に対する判断と安全性の検討に分かれていた.スタッフの感じたTwiddle muffの活用による効果では,【1.ミトン拘束低減による心身の緊張からの解放や快感覚刺激による緩和効果】【2.認知症高齢者の理解と穏やかなコミュニケーションの促進】【3.ベッド柵やライン類を握りしめる行為の低減による移乗・移動操作の介助やリハビリテーションの促進】【4.廃用症候群予防のリハビリテーションとしての活用】のカテゴリーから構成されていた.Twiddle muffを活用できる認知症高齢者に対する判断と安全性の検討に関しては,【1.ベッド柵やライン類を握る傾向のある患者に対する活用の可能性の判断】【2.Twiddle muffに関心を示さない患者の活用の中止や強く引っ張る患者の安全な活用の検討】【3.多職種カンファレンスや認知症サポートチームでTwiddle muffの活用を検討する】の3つのカテゴリーが分析された.結論:スタッフはTwiddle muffの活用によって認知症高齢者の苦痛の緩和だけではなく,スタッフ自身にも認知症の理解やコミュニケーションの促進の効果を感じていた.

  • 月井 直哉, 中村 考一, 山口 晴保
    2023 年 60 巻 4 号 p. 424-433
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    目的:介護施設に入所する認知症の人を対象に,認知症の行動・心理症状(BPSD)に着目して,職員がひもときシート(ひもとき)を用いた介入の効果を従来通りのケアと比較して検証することを目的とした.方法:介護施設に入所している認知症の人37名を対象に非ランダム化比較試験を行った.介入期間は4週間とし,介入群17名には,①Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia plus Questionnaire(BPSD+Q)の項目から介入する1項目のBPSDを選択,②ひもとき管理者を中心としたチームで着目したBPSDについて,ひもときの記入と情報の共有,③ひもときに記載した内容に準じたケアを実施した.対照群18名には従来通りのケアを4週間行った.解析は,群とBPSD+Qの得点の変化の比較を二元配置分散分析にて行った.結果:介入群は,介入方法の誤りにより1名が脱落し,16名,対照群は,認知症の人の基本属性の欠損により2名が脱落し,16名,計32名が分析対象となった.認知症の人の基本属性は群間で有意差は認めなかった.群とBPSD+Qの負担度(F= 4.704,p= 0.038)と過活動性BPSDの負担度(F= 4.946,p= 0.034)の得点は群と有意な交互作用を認めた.介入群でのみ,介入前後でBPSD+Q(p= 0.002)と過活動性BPSD(p= 0.001)の得点が有意に減少していた.その他の項目では,有意な交互作用は認めなかった.また,過活動性BPSDの重症度においては,介入群でのみ,介入前後で有意に得点が減少していた(p= 0.010).結論:ひもときを用いたケアの効果として,BPSD+Qと過活動性BPSDの負担度の得点の有意な交互作用(減少)を認めた.また,介入前後で過活動性BPSDの重症度の得点が減少した.

  • 鈴木 知明, 渡辺 修一郎
    2023 年 60 巻 4 号 p. 434-439
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    はじめに:高齢者の家及び居住施設の浴槽における死亡者数は,2017年以降はやや減少傾向にあるが,それでも4,900人(2019年)と交通事故死亡者数の2倍近い.目的:地域在住高齢者の入浴時における血圧と脈拍変動を調査し,ヒートショック状態がいつ起こるのかを判断する警戒範囲の検討を目的とした.方法:男性高齢者10名(72.6±3.4/67~78)を対象として,湯温41℃の浴槽に6分間の全身浴を実施し,収縮期血圧,拡張期血圧,脈拍(以下SBP,DBP,PRと略す)を測定した.結果:入浴前から入浴30秒後にかけてPRが15/分以上上昇した群のSBPは,入浴30秒後に約30 mmHg上昇した.また,同じくPRが15/分以上上昇した群は脈圧(以下PPと略す)が28 mmHg上昇し,ダブルプロダクト(以下DPと略す)は入浴前から入浴30秒後にかけて5,000 DP以上の異常上昇がみられた(p<0.05).考察:入浴前から入浴30秒後にかけて,PRが15/分以上上昇した群は入浴直後に脳出血,出浴直後にめまいや立ち眩み,転倒の可能性があると考えられる.PP,DPの分析からも,入浴30秒後に心臓への負担がかかり,十分な注意が必要と思われる.

症例報告
  • 山下 真由, 青木 昭子, 小林 弘, 脇屋 緑, 中津川 宗秀
    2023 年 60 巻 4 号 p. 440-447
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    巨細胞動脈炎(GCA)はリウマチ性多発筋痛症(PMR)との関連が示唆され,GCAの約50%でPMRを,PMRの10~20%でGCAを合併する.PMR治療中にGCAを発症した1例を報告する.症例は82歳の女性,X-4年12月両肩痛が出現し,X-3年2月当科受診.血清CRP高値,関節エコーで両肩に滑液包炎を認めPMRと診断した.プレドニゾロン(PSL)15 mg/日を開始後,症状は速やかに改善し,X年5月1 mg/日まで減量した.その1カ月後,腰部から大腿部の筋痛と左側頭部圧痛が出現した.6月下旬の外来で血清CRP値は3 mg/dLに上昇していたが,側頭動脈エコーでは異常所見を認めなかった.PMRの再燃と考え,PSLを2 mgに増量したが,症状は改善しなかった.7月の外来で後頭部痛の訴えあり,血清CRP値は9 mg/dLに上昇していた.GCAと診断しFDG-positron emission tomography(PET)CT scan(PET/CT)を実施したところ,両側浅側頭動脈,両側椎骨動脈に異常集積を認めた.大血管の病変はなく頭蓋型GCAと診断し,PSLを30 mg/日に増量した.視力低下の訴えがあったが,眼科診察で虚血性視神経症の所見を認めなかった.再検した側頭動脈エコーで全周性の低輝度肥厚像(halo)を認めた.側頭動脈生検では類上皮細胞や巨細胞は認めなかったが,内弾性板の断裂や慢性炎症細胞浸潤などの血管炎所見を認めた.PSL増量後に症状は改善し,血清CRP値も低下した.ステロイド糖尿病を発症したため,トシリズマブを追加し,現在もPSL漸減中である.PMR経過中,PSL減量後にGCAを発症した1例を経験した.PET/CTで頭蓋内動脈の炎症を確認し診断を確定することができた.PET/CTは日本では診断のために実施することはできないが,診断の補助に有用であると考えた.

短報
医局紹介
日本老年医学会地方会記録
feedback
Top