2025 年 62 巻 1 号 p. 70-77
目的:高齢者は人との接触頻度が少ない社会的孤立状態にあると,食欲や食事摂取量が低下し,栄養状態が悪化すると考えられる.しかし,社会的孤立と栄養状態に関する日本人高齢者のエビデンスは十分ではなく,農村地域や郊外地域における検討にとどまっている.本研究では,都市地域に在住する高齢者における社会的孤立と栄養状態の関連について横断的に検証することを目的とした.方法:東京都に在住する65歳以上の高齢者1,143名を対象に会場調査を行い,データに欠損のない1,052名(中央値78歳,女性568名)を解析対象とした.栄養状態にはMini Nutrition AssessmentⓇ-Short Formを用いて評価し,11点以下を栄養状態不良とした.社会的孤立はLubben Social Network Scale短縮版を用いて評価し,12点未満を社会的孤立とした.全体及び男女別に社会的孤立を独立変数,栄養状態不良を従属変数,年齢,居住状況,喫煙習慣,飲酒習慣,疾病罹患状況,基本的日常生活動作,経済状況,教育歴を共変量とした二項ロジスティック回帰分析を行った.結果:社会的孤立は全体の41.7%(439名),栄養状態不良は27.4%(288名)であった.社会的孤立は栄養状態不良と有意に関連した(オッズ比1.41,95%信頼区間1.06~1.88).男女別では,女性では社会的孤立による栄養状態不良のオッズ比が有意に高かったが(オッズ比1.45,95%信頼区間1.01~2.10),男性では有意な関連が見られなかった(オッズ比1.34,95%信頼区間0.85~2.13).結論:日本の都市高齢者全体および女性において,社会的孤立状態であることが栄養状態不良と有意に関連することが明らかとなった.今後,縦断的検討にて因果関係を明らかにした上で,栄養状態不良の予防の一環として社会的孤立対策の取組が必要だと考えられる.