2026 年 63 巻 2 号 p. 120-125
日本では高齢化に伴い,がん・認知症・心不全など複数の慢性疾患を併存する高齢者が増加している.認知症は意思決定能力や治療継続に影響し,BPSDにより治療選択が難しくなるため,ACP(Advance Care Planning)の重要性が高い.多疾患を抱える中で「病気が人生の主役になってしまい,『人生のイニシアティブ』を病気にまかせてしまう」状況を避けるため,早期からのACPが必要である.
またがん治療は治療法の進歩により長期化し,予後の不確実性が増している.高齢者ではがん以外の疾患が死因となることも多く,がんは多疾患併存の一要素として捉える必要がある.しかし現場では,がん診断が他疾患治療より優先され,治療中止と同時に心不全・腎不全などの治療まで縮小される「過小診療」が生じ得る.
マルチモビディティ高齢者では,治療目的の再定義,臓器予備能の評価,認知症進行に応じた調整が必要である.CGAやe-prognosisの活用,多職種連携の強化が求められる.