わが国では認知症および軽度認知障害(MCI)の有病者数は今後さらに増加すると推計されている.非薬物的な予防戦略の確立は喫緊の課題である.近年,複数の危険因子に同時に介入する多因子介入が注目されている.わが国ではJ-MINT研究が実施され,日本人のライフスタイルに即した多因子介入の有効性が検討された.
J-MINTはMCI高齢者を対象とした18カ月のランダム化比較試験であり,運動,栄養,認知トレーニング,生活習慣病管理を組み合わせた介入を行った.主要評価項目である認知機能のコンポジットスコアでは,介入群と対照群の間に有意差は認められなかったが,運動教室へのアドヒアランスが高い群では有意な改善が確認された.さらにサブグループ解析により,APOE ε4保有者,GFAP高値群,未治療またはコントロール不良の血管危険因子を有する者において,より顕著な認知機能改善が認められ,多因子介入の効果は対象集団に依存することが示された.費用対効果の解析では,J-MINTは医療・介護費の削減とQALYの向上を同時に達成する介入であることが示された.
多因子介入の社会実装においては,エビデンスに基づくプログラムの不足,人材不足,参加者の確保や継続の困難さ,持続可能なビジネスモデルの欠如といった課題がある.これらを踏まえ,6カ月間の地域版J-MINT Brain Healthプログラムの開発,インストラクター養成・認証制度の構築,さらに事業化を担う組織の設立を進めている.現在,全国20自治体におけるクラスターRCTにより,地域版J-MINT Brain Healthプログラムの検証が進行中である.
今後の課題としては,効果を最大化する対象集団の選定,血液バイオマーカーの活用,対面・オンラインを含めた介入方法の最適化,作用機序の解明などが挙げられる.認知症においても早期発見・早期介入が重要な戦略となることが期待される.