老化はこれまで,DNA損傷,テロメア短縮,ミトコンドリア機能障害,慢性炎症などの分子異常が時間とともに蓄積する過程として理解されてきた.しかし近年,体細胞核移植および人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS細胞)技術の進展により,分化した体細胞であっても初期化されうることが明確に示された.これは,老化が単なる不可逆的損傷の総和ではなく,少なくともその重要な部分が可塑的な状態変化であることを意味する.本稿では,生命の連続性という視点から,体細胞核移植,iPS細胞,エピジェネティック老化,部分的リプログラミング,さらには胚盤胞様構造や胚モデル研究までを概観し,これらが老年医学に与える概念的・実践的意義を論じる.iPS細胞研究は,加齢性疾患の病態解明や創薬,再生医療のための基盤技術であるだけでなく,「老化はどこまで可逆か」という老年医学の根本問題に答えうる研究領域でもある.