2026 年 63 巻 3 号 p. 237-242
82歳女性.意識障害を主訴に救急搬送され,糖尿病ケトアシドーシスと蜂窩織炎の診断で入院した.急性期治療の後,第4病日にはインスリンの持続静注を皮下注射での頻回注射療法に切り替えた.第9病日の随時血清Cペプチド(以下CPRと略す)0.55 ng/mL,血糖218 mg/dLと,インスリン分泌能は低下していた.第16病日,空腹時CPR 0.42 ng/mL,空腹時血糖140 mg/dLと,血糖コントロール改善後もインスリン分泌能の低下が持続していた.インスリン離脱は困難と思われたが,施設退院に向けてインスリンの漸減を図る方針とした.デュラグルチドとレパグリニドの使用を開始したところ,最大で23単位を要していたインスリンを離脱することができた.糖毒性の解除と,GLP-1受容体作動薬を含めた薬物治療がインスリン離脱に寄与したと考えられる.良好な血糖コントロールのためにインスリン治療を必要とするかを予測するために,血清CPRや蓄尿CPRの値が有用と報告されている.既報の値に照らし合わせると,本症例ではインスリン離脱が困難と予想されたものの,実際にはインスリンを離脱することができ,示唆に富む症例と考えられるため,インスリン分泌能の評価に関する注意事項を含めて報告する.