抄録
老年者の腎動脈系に血管造影剤を一定圧力の下に注入して, 動脈をより自然な状態に伸展せしめ, 細小動脈の硬化性病変に伴う血管内腔の狭窄度を計測し, 数量的に加齢. 動脈性疾患 腎動脈樹, 大動脈病変 等との関連を検討した. 対象は, 50歳以上の男37例, 女29例の計66剖検例の摘出腎で, 小動脈樹については立体的に観察した. 各症例の細小動脈は, その血管径 (2r) よりA群 (2r<50μ), B群 (50≦2r<100μ)およびC群 (100μ≦2r<200μ) の三群に分け, 各群について内腔狭窄度の平均計算して検値を討した. その結果は, 1) 腎細小動脈の平均狭窄度は, 各症例ともA, B, C群の各相互間において有意な相関関係を示した. 2)腎細小動脈の狭窄度は, A, B, C群ともに加齢に伴い増加し, 70歳代に最高値を示した. 3) 腎細小動脈の狭窄度はA, B, C群ともに動脈性疾患群に高度であった. 4) 収縮期血圧値が平均180mm. Hg以上の症例は,腎細小動脈の狭窄度はA, B, C群ともに高値を示した. 拡張期血圧値と腎細小動脈の狭窄度との間には有意な関連性を認めなかった. 5) 腎皮質の厚さの減少に伴いA, B, C群に腎細小動脈狭窄度の増加の傾向を示した.6) 腎細小動脈硬化は大動脈拡張性変化およびアテローム硬化と有意な相関性を示した. 7) 立体的に観察した腎小動脈樹の構築の変化を血管内腔の不規則な狭小化, 蛇行, 細枝の欠落の変化の程度より分類して対比を行なった. これらの変化の高度なものは, 対照に比べて有意に高年であり. 腎の重量, 長径, 皮質の厚さは減少を示し, 細小動脈硬化は高度であり, 動脈性疾患が多くを占めた