日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脳スキャンによるCVDの予後判定の試み
剖検で確認されたCVD62例の retrospective study
川口 新一郎飯尾 正宏村田 啓千葉 一夫山田 英夫松井 謙吾阿部 正秀戸張 千年丹野 宗彦布施 正明星 豊藤原 敬悟
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1978 年 15 巻 3 号 p. 260-266

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抄録
著者らは当院で過去5年間に生前脳スキャンを受け, のち剖検され, その病理組織像が明らかにされている62例 (脳硬塞55・脳出血7) を対象とし, retrospective study を行い脳スキャンによるCVDの予後判定が可能かどうかを予後の違いによるグループ別に, 脳スキャン陽性度, 陽性病巣サイズ, 病巣部位について検討した. CVD発症後1カ月以内, 2カ月目~6カ月, 7カ月目~12カ月, 2年目以上に死亡した例を各々1群 (6例), 2群 (28例), 3群 (12例), 4群 (16例) とした.
脳硬塞においては陽性症例は55%, 陽性スキャン頻度は58%, 経過観察平均スキャン回数は1.5回, 陽性度平均は1.9±1.2度, 陽性サイズ平均5.9±3.2cmであった. 脳出血においては上記の順に夫々43%, 44%, 1.3回, 1.7±1.1度, 6.5±1.7cmの結果であり陽性サイズのみ脳硬塞より高い値を示した.
脳硬塞例では発症5カ月後迄が陽性期であり陽性度よりみると発症後4週目に陽性ピークがあった. 脳スキャン陽性度平均は第1群で2.3±1.1, 第2群で2.3±1.2, 第3群1.7±1.0, 第4群で1.3±1.1度と差がみられた. 即ち脳スキャン陽性度平均と予後の長短は相関が認められた. 予後の悪い第1群, 第2群では最初から高い陽性度を示し予後のよい第4群では急速な陰性化を示すことが特長的であった. しかし4群別に検討した経時的陽性度平均の最大値は上記の順に3.0, 3.2, 2.7 3.0度と差はみられなかった. 陽性スキャンの頻度は上記の順に各々75, 68, 68, 33%であった. 陽性病巣サイズ平均は上記の順に各々7.0±5.0, 6.8±3.7, 4.8±1.4, 5.1±2.1cmと重症例程陽性病巣サイズが大きい傾向はみられたがSDが大きく平均値による検討は意味付けが難しかった. 陽性度と陽性サイズに相関があるかどうかを検討した所, 両者の相関はなく陽性度と病巣の大きさの持つ臨床的意義は別である事が分った.
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