抄録
老年者原因不明の低Na血症例について腎機能を検討し次の結論を得た.
(1) 対象群は尿Na排泄量の少い群 (第一群) と, 多い群 (第2群) に分類可能であった.
(2) 第1群では血清BUN高値, CCr低値, PSP色素排泄能低下, 尿濃縮能低下, 尿稀釈能正常, 及び水排泄能正常を示した.
(3) 第2群では血清BUN正常, CCr低値, PSP色素排泄能低下, 尿濃縮能低下の傾向, 尿稀釈能低下及び水排泄能低下を示した.
(4) 第1群は, Na再吸収過程は正常に保たれていると考えられ, むしろ, 水再吸収過程に問題があるように思われた. 従って, 本群における低Na血症発症過程に腎機能障害が深く関与していた可能性は少いと思われる.
(5) 第2群においてはNa再吸収過程は障害されており, 本群の低Na血症の発症には, 腎のNa調節機構の障害が深く関与している可能性がある.