高齢者群の栄養水準の地域特性を検討するために沖縄地域における定期健診時に, 65~104歳までの健常例118例に対し, 栄養摂取状態に関するデーターを併せ収集し, 血液化学所見のうち最も栄養水準の評価に関係あると考えられる血中ヘモグロビン量, 血清総たんぱく, 血清アルブミン, 血清総コレステロール, ならびに中性脂肪を選び, 次いで健診結果としての身長, 体重, 収縮期および拡張期血圧を求め, 更に面接ならびに調査用紙法によって得たデーターより摂取総カロリー量, たんぱく質, 糖質, 脂質, 食塩量を算出し, これらを14変数として, 中型電算機を使用して主成分分析を施行した. 第1主成分では, 摂取総カロリー量, たんぱく質, 脂質, 体重などが大きい正の因子負荷量を示しており,「摂取量の因子」が推定され, 第2主成分では, 収縮期血圧, 血清総たんぱくならびにアルブミンが大きい正の因子負荷量を示しており,「血圧に関する因子」が考えられた. 第3主成分では摂取脂肪, 食塩, たんぱく質ならびに総コレステロールなどが大きい正値を示し「脂肪の因子」が考えられ, 第4主成分では血圧, 摂取総カロリー量, 糖分, 脂質が大きい正の因子負荷量を示したところより「摂取糖質を中心とする因子」が推定された.
個々の症例の一次結合値 (スコア) に関しては第1, 第2主成分方向では, 90~100歳代高齢者群は多くは負の値を示しており, これらの群の摂取量や血圧に関しての特性が示された. 一方栄養摂取量は, 高齢者群に至るに従って減少傾向はみられているが, 相対的に糖質, 脂肪摂取量では著明な減少傾向はみられず, 主成分分析の結果と併せて対比させると沖縄地域における高齢者群の栄養摂取面に関しての偏向性が考えられた. したがって, 地域の高齢者群をこの様な栄養水準面から眺めると, 個々の差は認められるが代謝諸相での減退傾向が伺われ, 一方, この様な傾向は代償的に健康保持に向けられている事が推察された.
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