日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
17 巻, 1 号
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  • 第2報 老年者低Na血症の腎機能と病態の関連について
    白木 正孝, 高橋 龍太郎, 井藤 英喜, 大山 俊郎, 折茂 肇
    1980 年17 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 1980/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者原因不明の低Na血症例について腎機能を検討し次の結論を得た.
    (1) 対象群は尿Na排泄量の少い群 (第一群) と, 多い群 (第2群) に分類可能であった.
    (2) 第1群では血清BUN高値, CCr低値, PSP色素排泄能低下, 尿濃縮能低下, 尿稀釈能正常, 及び水排泄能正常を示した.
    (3) 第2群では血清BUN正常, CCr低値, PSP色素排泄能低下, 尿濃縮能低下の傾向, 尿稀釈能低下及び水排泄能低下を示した.
    (4) 第1群は, Na再吸収過程は正常に保たれていると考えられ, むしろ, 水再吸収過程に問題があるように思われた. 従って, 本群における低Na血症発症過程に腎機能障害が深く関与していた可能性は少いと思われる.
    (5) 第2群においてはNa再吸収過程は障害されており, 本群の低Na血症の発症には, 腎のNa調節機構の障害が深く関与している可能性がある.
  • 第1報 安静時の血小板凝集能の測定条件に関する考察
    永川 祐三
    1980 年17 巻1 号 p. 7-17
    発行日: 1980/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    動脈硬化性疾患を主とする各種疾患の固定した時期における患者および健常者において, 比濁法による血小板凝集能の測定値に影響を与える諸条件を検討した. すなわち採血および多血小板血漿 (以下PRPと略す) 分離から凝集計による測定までの時間による変化, stirrer の回転数, 凝集惹起物質の濃度変化, PRP中の血小板数, PRP作製の際の遠沈速度などによる影響について, 次の結果を得た.
    1) ADP, コラーゲン, アドレナリンによる血小板凝集において, 最大凝集能は採血後経時的に上昇し, 最大凝集能の1/2の凝集を示すまでの時間は経時的延長傾向, 解離度は経時的低下傾向を示した. ADPおよびコラーゲン凝集は採血後60~120分の間で, PRP採取後35分以上経過後に, またアドレナリン凝集は採血後90~180分の間で, PRP採取後45分以上経過後に安定していた.
    2) 棒状 stirrer の回転数を1,000, 2,000, 3,000rpmに変動させた場合回転数の上昇とともに3種の凝集惹起物質による最大凝集能は上昇した. 凝集惹起物質の濃度を低下させると最大凝集能は低下した. PRP採取のための遠沈速度に関し, 130gおよび200gで検討した結果低速の場合の方が凝集能は高値を示した. 凝集能の亢進が予想される疾患を対象とする場合正常値が低めであること, また各種疾患での測定値が高値あるいは低値にかたよることなく広く分布している方が測定に適するという見地から stirrer の回転数は1000rpm, PRP採取のための遠沈速度は200gで, ADP, アドレナリンの最終濃度はそれぞれ2×10-6M, 1×10-6Mが適し, コラーゲンの濃度では著者調整の2倍希釈液が適すると考えられた.
    3) PRPの血小板数の調整により凝集能は変動するが, 調整して得られた測定値は病態からへだたった現象をとらえる危険性があり, 補正しないPRPでの測定の意義は十分あると思われた.
  • 第2報 動脈硬化性疾患における安静時の血小板凝集能の意義について
    永川 祐三
    1980 年17 巻1 号 p. 18-28
    発行日: 1980/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    動脈硬化性疾患において血小板凝集能の亢進の有無を吟味し, 血小板凝集能と凝固・線溶系, 血清脂質との関連を検討した. 対象は急性期をのぞく虚血性心疾患 (以下IHDと略す) および脳血栓症 (以下CTと略す) 140例とし, 健常者81例を対照とした. 血小板凝集能測定は第一報の結論に準じて行い, 血漿フィブリノーゲン (以下 Fbg と略す), ユーグロブリン溶解時間 (以下ELTと略す), 血清総コレステロール (以下TCと略す), 中性脂肪, βリポ蛋白, 遊離脂肪酸も同時に測定した. その結果, 動脈硬化性疾患においてADP, コラーゲン, アドレナリンの3種の凝集惹起物質による血小板凝集能のいずれもが亢進していることが明らかにされた. また血小板凝集能の指標として最大凝集能の値が最も有意な差違を示し, 比較する指標に適すると考えられた. 動脈硬化群の間でIHDとCT合併例で凝集能が最も亢進していることが示され, このことは動脈硬化の進展の高度なものほど血小板凝集能が亢進を示すものと推察される. ADP凝集と Fbg, 血清脂質との関連, アドレナリン凝集とTCとの関連が認められたが, コラーゲン凝集では Fbg, 血清脂質との関連が認められなかったことから凝集惹起物質の種類により凝固・線溶系, 血清脂質との関連に差違があると考えられた. 健常者に比べて動脈硬化性疾患では Fbg が増加していることも明らかにされた.
  • 第3報 虚血性心疾患における血小板凝集能 運動負荷による影響
    永川 祐三
    1980 年17 巻1 号 p. 29-38
    発行日: 1980/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患における血小板凝集能の意義を明らかにする目的で安静時の血小板凝集能を検討すると共に, 運動負荷による血小板凝集能の変動の意義も検討した. 対象は急性期を除く心電図上虚血性変化を示す虚血性心疾患113例とし, 健常者81例を対照とした. 虚血性心疾患群をさらに次の4群, すなわち心筋梗塞群, 労作性狭心症群, 高血圧を伴うST低下群, 正常血圧を示すST低下群に分類して検討した. その結果, 虚血性心疾患においてADP, コラーゲン, アドレナリンの3種の凝集惹起物質による血小板凝集能が亢進していること, また虚血性心疾患群のうち, 特に心筋梗塞群においてその亢進が著明であることが明らかにされた. このことは冠硬化の進展の高度なものほど血小板凝進能は亢進を示すものと推察される. 虚血性心疾患20例, 健常者17例では坐位ペダルエルゴメーターを用いて, 運動負荷試験を行った. その成績では, 健常および虚血性心疾患の両群においてADPおよびコラーゲンの最大凝集能は負荷直後上昇し, 負荷終了後10分で負荷前の値に近づくが, アドレナリンの最大凝集能は負荷直後上昇し, 負荷後10分でも低下傾向を示さなかった. 負荷後に血小板および血漿フィブリノーゲンの上昇傾向, ユーグロブリン溶解時間の短縮傾向が健常および虚血性心疾患の両群において認められた. すなわち, 虚血性心疾患において血小板凝集能, 血漿フィブリノーゲンは運動負荷前にすでに上昇しており, 運動負荷によりさらに上昇することが明らかにされた.
  • 多変量解析による試み
    赤松 隆, 古見 耕一, 福島 輝美, 大浜 博紀, 鈴木 信, 野田 寛
    1980 年17 巻1 号 p. 39-48
    発行日: 1980/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者群の栄養水準の地域特性を検討するために沖縄地域における定期健診時に, 65~104歳までの健常例118例に対し, 栄養摂取状態に関するデーターを併せ収集し, 血液化学所見のうち最も栄養水準の評価に関係あると考えられる血中ヘモグロビン量, 血清総たんぱく, 血清アルブミン, 血清総コレステロール, ならびに中性脂肪を選び, 次いで健診結果としての身長, 体重, 収縮期および拡張期血圧を求め, 更に面接ならびに調査用紙法によって得たデーターより摂取総カロリー量, たんぱく質, 糖質, 脂質, 食塩量を算出し, これらを14変数として, 中型電算機を使用して主成分分析を施行した. 第1主成分では, 摂取総カロリー量, たんぱく質, 脂質, 体重などが大きい正の因子負荷量を示しており,「摂取量の因子」が推定され, 第2主成分では, 収縮期血圧, 血清総たんぱくならびにアルブミンが大きい正の因子負荷量を示しており,「血圧に関する因子」が考えられた. 第3主成分では摂取脂肪, 食塩, たんぱく質ならびに総コレステロールなどが大きい正値を示し「脂肪の因子」が考えられ, 第4主成分では血圧, 摂取総カロリー量, 糖分, 脂質が大きい正の因子負荷量を示したところより「摂取糖質を中心とする因子」が推定された.
    個々の症例の一次結合値 (スコア) に関しては第1, 第2主成分方向では, 90~100歳代高齢者群は多くは負の値を示しており, これらの群の摂取量や血圧に関しての特性が示された. 一方栄養摂取量は, 高齢者群に至るに従って減少傾向はみられているが, 相対的に糖質, 脂肪摂取量では著明な減少傾向はみられず, 主成分分析の結果と併せて対比させると沖縄地域における高齢者群の栄養摂取面に関しての偏向性が考えられた. したがって, 地域の高齢者群をこの様な栄養水準面から眺めると, 個々の差は認められるが代謝諸相での減退傾向が伺われ, 一方, この様な傾向は代償的に健康保持に向けられている事が推察された.
  • 萬代 隆, 荻原 俊男, 波多 丈, 岡田 義昭, 小笠原 三郎, 三上 洋, 中丸 光昭, 岩永 圭市, 熊原 雄一
    1980 年17 巻1 号 p. 49-55
    発行日: 1980/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    本態性高血圧症, 血圧維持機構における交感神経系の関与が注目されている. しかし, 多種の要因が複雑に関与しているため現在のところ明確な結論は得られていない. 今回, 本態性高血圧症における加齢による交感神経系の関与の差異を検索するため, グルカゴン負荷時の尿中カテコールアミン反応性 (尿中アドレナリンおよびノルアドレナリン排泄値) を指標とすることにより, 老年性および若年性本態性高血圧症の交感神経系機能を比較検討した. その結果, 1) 若年性本態性高血圧症患者において, 交感神経系の反応性亢進をみたが, 2) 老年性本態性高血圧症患者においては, 交感神経系の反応性亢進は認められなかった. また, 3) 若年性および老年性の正血圧者群においては, 交感神経系反応性に有意な差異が認められず, 今回の実験に関する限り, 正血圧者群における加齢による交感神経系の反応性変化は認められなかった. 以上の結果より, 本態性高血圧症における病因としての交感神経系の関与は, 若年性本態性高血圧症では強く疑われたが, 老年性本態性高血圧症においては認める事ができなかった.
  • 佐藤 秩子, 田内 久, 花之内 基夫
    1980 年17 巻1 号 p. 56-62
    発行日: 1980/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    中米コスタリカにおける47例の男子剖検肝組織を用いて, 組織学的, 微計測的検索を行った. これらの材料と, すでにその加齢変化について検索の行われた在日日本人男子, 在ハワイ日本人男子 (一世70歳以上, 二~三世60歳以下), 米白人男子例とを併せ比較検討した.
    コスタリカ人として今回検索した例の約40%はヨーロッパからの白人移民1世, その他は主としてヨーロッパ白人と原地インディオとの混血, あるいは移民とその混血との子孫という訳で, 遺伝的には米白人に近い.
    在米白人, コスタリカ人の両者の比較では, 肝重量は若干コスタリカ人に軽いが, 肝の微計測的検索成績によれば田内らが本質的な老性変化, 老化の指標としている肝細胞数, 2核肝細胞数の年齢消長は70歳代まで殆んど同様の傾向を示した. 80歳以後では, 米白人に比しコスタリカ人の肝細胞の減数がつよく, 一方70歳以後の肝細胞体, 核の増容が目立つ. 田内, 佐藤は人の肝における細胞数が頂点に達する, 即ち成熟の頂点の時期の細胞数は, 遺伝的ならびにそれまでの栄養環境により左右されると同様に, この時期の細胞数を規準として, その後の老性減数が始まると考えた. 従って成熟後の栄養環境が改善されても, 肝臓の場合, 肝細胞の大きさは増大し, 肝重量の加齢に伴う減少は軽減されても, 減数を緩徐にすることは出来ないと考えて来た.
    今回検索したコスタリカ人の70歳代, 80歳以上の症例は, ヨーロッパからの移民一世にせよ, コスタリカ生まれにせよ, 第1次世界大戦時にその成熟期を過した人々であり, 在米白人に比し, 栄養環境は良好ではなかったと言われている.
    コスタリカ人の成熟期の栄養環境が, その後の老化様相 (実質細胞減数) につよく影響している点を在ハワイー世の場合と同様に理解して種々考察を試みた.
  • 小林 正彦, 金子 茂, 諸岡 成徳, 石川 正幸
    1980 年17 巻1 号 p. 63-70
    発行日: 1980/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Arachidonic acid (AA) の過酸化脂質である15-Hydroperoxy arachidonic acid (15-HPAA) 並びに紫外線照射未精製 Hydroperoxides (HPO) の家兎微小血管及び大動脈の透過性に及ぼす影響に加えて, phthalazinol の抑制効果を検討した.
    i) AA (100mg/50ml, 30mM-Na2CO3) と lipoxidase (50mg/750ml, borate buffer) を室温, 10分反応後薄層プレートで分離・精製し, Mass spectrometory を用いて精製物が15-HPAAである事を同定した.
    ii) HPOはAA (100mg/25ml, 30mM-Na2CO3) を紫外線ランプ (100V, 250W) で10日間照射し作製した, 未精製物を用いた. TBA法で Malondialdehyde 値を測定し, 用いたHPOは126nmoles MDA/mlに相当した.
    iii) AAは137μM (41.7μg/ml) で家兎血小板を凝集させた (透過率75%) のに対し, 15-HPAA及びHPOは同一重量濃度でまったく凝集は認められなかった.
    iv) 15-HPAAの皮内注射で微小血管からの Evans blue 漏出はその吸光度が10μg, 0.05±0.004, 100μg, 0.18±0.024, 500μg, 0.38±0.017と dose-dependent に亢進したが, この作用は低濃度で弱く, 100~500μgの高濃度で著るしく増強した.
    v) 大動脈壁の浮腫形成度は対照22.5±2.12%, 15-HPAA 68.3±4.30%, HPO 70.8±11.46%と有意(p<0.005) に出現し, かつ15-HPAAとHPOとは有意の差が無かった.
    vi) phthalazinol 5mg/kgの2回の静注前投与で微小血管の色素漏出が, 同量の1回の静注前投与で大動脈壁透過性亢進の結果出現する浮腫形成は40.8±6.77%と有意 (p<0.01) に抑制された.
    vii) 本実験の結果はAAの夾雑に依るものでは無く, 15-HPAAの作用に依るものと考えられ, 更に大動脈壁に浮腫を著明に惹起する事から atherogenesity の強い事が示唆された.
  • 1980 年17 巻1 号 p. 71-104
    発行日: 1980/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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