日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者胃癌に関する臨床的観察
松久 威史大島 博
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1983 年 20 巻 5 号 p. 398-404

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抄録
老年人口の急速な増加に伴い, 老年者胃癌の問題は徐々に注目されつつある. われわれは当内視鏡科で経験した60歳以上の老年者胃癌をそれ以下の年齢層の胃癌と比較し, その特徴を検討した.
当科における最近5年間の進行胃癌患者302例, 最近7年10か月間の早期胃癌患者92例のうち老年者の占める頻度はそれぞれ57.0%, 34.8%であった. また老年者胃癌の男女比は, 進行胃癌の1.9:1に対し早期胃癌では3.0:1で, 男性の占める割合が多かった.
老年者胃癌患者の愁訴としては上腹部痛が多かったが, 無愁訴例の頻度は進行癌, 早期癌とも若, 中年者よりも高い. 老年者のなかでも60歳代より70歳以上の高齢者の方に無愁訴例がより多かった.
進行胃癌の肉眼型別頻度をみると, 70歳以上の高齢者ではそれ以下の年齢層には全く認められない Borrmann 1型が8例あった. Borrmann 2型は加齢と共に増加し70歳以上で42.5%を示すのに対し, Borrmann 3型, 4型は減少していた. 老年者早期胃癌の肉眼型別分類においては, I型およびIIa+IIc型が若, 中年層より増加し, IIc型およびIIc+III型が減少する傾向を示した.
老年者胃癌の占居部位は進行癌では早期癌に比べA, Cが多く, Mが少ない. Borrmann 4型を除外し進行胃癌の各型について病巣の大きさを比較すると, 老年者において大きいものの多い傾向が認められる. 60歳以上の早期胃癌では最大径3cm以下の小さいものが多かった (82.1%).
老年者胃癌の組織型をみると, 若, 中年者に比べ乳頭腺癌, 高分化型管状腺癌が増加し, 低分化腺癌,印環細胞癌が減少する傾向にあった.
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© 社団法人 日本老年医学会
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