論文ID: NSKKK-D-25-00019
本研究では,新しい力学特性を有するこんにゃくゲルの作製を試みた.こんにゃくのゲル化剤として通常使用されている水酸化カルシウム懸濁液の代わりに,ホタテ貝の貝殻より作製した粒子径の異なる5種類の粒子状ゲル化剤(1.4 mm < Da ≤ 4.0 mm, 910 μm < Db ≤ 1.4 mm, 530 μm < Dc≤ 910 μm, Dd ≤ 310 μm, De ≤ 150 μm)を用いた.得られたこんにゃくゲルは粒子径の比較的大きなゲル化剤(530 μm < Da, Db, Dc ≤ 4.0 mm)を用いた場合,ゲル化剤を中心に白濁部分と半透明の部分からなる不均一構造を示した.これらのこんにゃくゲルに対して,貫入抵抗測定と表面および内部のpH測定を行った.白濁部分の貫入抵抗値が0.63 Nから0.90 Nであったのに対して,半透明部分の貫入抵抗値は,測定精度の0.05 N未満と極めて小さな値を示した.一方,pH値は11.62 ≤ pH ≤ 12.34といずれの試料においても測定部分による有意な差は認められなかった.半透明部分のpH値はゲル形成に十分なアルカリ性を示したにもかかわらず.貫入抵抗値は極めて小さな値を示しゲル化が確認できなかった.この試料にボイル加工を行うことで半透明部分は白濁し,貫入抵抗値は著しい増大を示した.ボイル加工によって得られた不均一なこんにゃくゲルと比較対象として作製した均一なこんにゃくゲルに対して,2バイトテクスチャー試験を行った結果,異なる力学特性を有することが分かった.