抄録
老化の成因に関しては古来数多くの説が出されているが, これらのうちどれ1つとして否定されたものも, 証明されたものもなく, 成因は今尚不明というのが実体であろう. 老化とは加齢に伴なう生理的機能の減退と定義できるが, 加齢に関してはこれを刻む生体内時計の概念が必要となる. 次に生体内時計の時間軸はエントロピーの増大方向で決定されることを示し, さらには生体内時計ではこのエントロピー増大が制御されているという考え方を述べる. 老化を単なる加齢と区別するのは, この制御が外れるか否かの点である. したがって外れた制御を元に戻すことが老化制御と定義できる.
一方不可逆過程の熱力学により, エントロピーの増大を極小にするための条件は, 変化を定常状態におくことが分っている. したがって老化とは定常状態から外れることと考えられる.
定常状態から外れる原因としては, 定常状態の崩壊と, これを元に戻す作用の消失の2つが考えられる. 前者に関しては代謝産物の蓄積, 合成と分解との脱共役を, 後者に関してはホルモン制御や免疫等ホメオスタシスの不全を考えて, 老化との関係を論じた. 老化の一因はホメオスタシスのプールサイズが減少することにあると考えられる.