日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
多変量解析による老年期の頭部CT上の脳萎縮, 知的レベル, 年齢相互の関係に関する経過研究
河合 真
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1984 年 21 巻 5 号 p. 485-491

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抄録
老化による知的機能の変化は, 従来, 単に加齢, あるいは脳萎縮との関係で多く論じられてきているが, これらの要因を相互の関連において同時に検討していく方法が必要であると考えられる. また対象が高齢者である場合, 現象を理解する上で個体差を無視することはできないと考えられる. 著者は以上の問題を, まず多変量解析の手法を用いて多要因を相互の関連において検討し, 次に同一対象の継時的研究を行ない個体差の問題をも含めて検討したので報告する. 対象は昭和55年4月より昭和58年9月までの期間に, 老人病院に入院中の65歳以上の臨床的に老年痴呆と診断された患者, および当院に隣接する老人ホームに入所中の65歳以上の知的正常老人, 計72例 (平均年齢75.4歳) である. 方法は長谷川式簡易痴呆スケールで計測された知的レベル, 頭部CTスキャン上の脳室拡大および年齢を多変量解析を用いて分析した. さらに同一対象の経過を知的レベルの変化と頭部CTスキャン上の脳室拡大の変化との関連において検討した. その結果, 知的レベル低下の現象の一側面が頭部CTスキャン上の脳萎縮と年齢の二因子からなる分析モデルで表現可能であること, 頭部CTスキャン上の脳萎縮の経時的変化が大きい群では, 痴呆スケール得点で10点以上の知的レベルの変化がみられたものもあり, また痴呆スケール上で満点及び0点に近い所に主として分布した. 以上の結果から知的レベルの低下には頭部CTスキャン上の脳萎縮の進展と加齢の両因子が関連を持っており, 一方の因子だけで現象を説明することは無理であると思われた. また1年から3年に及ぶ期間での頭部CTスキャン上の脳萎縮の進展は知的レベルの変化と関連があるが, 現在の痴呆スケールで計測される知的レベルの上限および下限をさらに延長したスケールを想定することで, この相互の関連を上述の分析モデル上で説明できる可能性も示された.
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© 社団法人 日本老年医学会
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