日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
正常血圧者の左室形態に及ぼす日常的な肉体労働の影響
中西 範幸小西 正光秋山 雅彦高山 佳洋寺尾 敦史内藤 義彦伊藤 裕康飯田 稔土井 光徳嶋本 喬小町 喜男
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 21 巻 5 号 p. 477-484

詳細
抄録
日常的な肉体労働の程度が異なると考えられる秋田, 大阪の4集団 (秋田農業従事者, 秋田事務職, 大阪現業職, 大阪事務職) に属する30~59歳男子正常血圧者471名を対象に, 超音波心臓検査を導入した循環器検診を実施し, 高血圧以外の要因として, 日常的な肉体労働が左室形態に及ぼす影響を検討した.
左室形態を集団間で比較すると, 拡張末期左室内径, 心室中隔厚, 左室後壁厚の平均値は, 30~44歳, 45~59歳の両年齢群において, 秋田農業従事者が4集団の中で最も大であり, 大阪の2集団の間では, 現業職が事務職に比べて大であった. すなわち, 左室形態の値は肉体労働の程度が強いと考えられる集団ほど大きい傾向を認めた. また, 秋田農業従事者では, 30~44歳に比べ45~59歳の方が, 心室中隔厚, 左室後壁厚が有意に厚かった. これは長期間にわたる厳しい肉体労働の影響と考えられる.
これらの地域間, 職種間の左室形態の差が, 高血圧の遺伝素因の差によってもたらされた可能性がある. そこで, 遺伝素因の影響を検討するために, 検診時の問診により両親の高血圧の有無を調べ, 両親の高血圧の有無による左室形態の差を比較した. その結果, 30~44歳の大阪事務職, 45~59歳の秋田農業従事者の左室後壁厚は, 高血圧の親を有する群は有しない群に比べ厚いことを認めたが, その他の集団, 年齢群では明らかな差を認めなかった. さらに, 秋田住民では, 両親の検診記録をもとに両親の高血圧の有無を調査し, 左室形態を比較した. 農業従事者, 事務職のいずれにおいても, 両親の高血圧の有無により拡張末期左室内径, 心室中隔厚, 左室後壁厚に有意の差を認めなかった.
すなわち, 日常的な肉体労働は正常血圧者の左室形態に影響を与えること, そしてその影響は高血圧の遺伝素因によるものより大きいことを明らかにした.
著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top