日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
動脈硬化症および糖尿病における血小板凝集能, β-トロンボグロブリン, アポ蛋白, アンチトロンビンIII, 線溶に関する研究
永川 祐三折茂 肇原澤 道美澤田 皓史
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1985 年 22 巻 1 号 p. 13-19

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抄録

急性期を除く虚血性心疾患および脳血栓症を伴う動脈硬化症患者のうちの37例の耐糖能異常を示さない動脈硬化群 (AS群, 平均年齢68.4歳, HbA1: 平均±標準誤差, 7.1±0.1%), 29例の糖尿病群 (DM群, 平均年齢67.6歳, HbA1:10.2±0.4%) および健常群18例 (NC群, 平均年齢40.3歳, HbA1:6.9±0.3%) の3群を対象として, 血小板凝集能, β-トロンボグロブリン (β-TG), 血漿脂質, リポ蛋白, アポ蛋白, アンチトロンビンIII (AT-III), 線溶活性を測定し, 比較検討した. 血小板凝集能は比濁法を用いてADP, コラーゲン, アドレナリン, アラキドン酸による in vitro の血小板凝集能を, また Wu-Hoak 法による in vivo の血小板凝集能 (循環血小板凝集) をそれぞれ検討した. 血漿・血小板のβ-TGは radioimmunoassay 法により, アポ蛋白は一元免疫拡散法により測定し, 血漿AT-IIIは生理活性を, また線溶はユーグロビン溶解時間を測定した. その結果, ADP, コラーゲン, アドレナリン, アラキドン酸による血小板凝集能はいずれもAS群で最も亢進する傾向を示し, 次いでDM群, NC群の順に高かった. 循環血小板凝集ではNC群に比較してAS群, DM群で亢進傾向が示された. 血漿β-TGはDM群で最も高く, 次いでAS群, NC群の順であった. 血小板中β-TGもNC群, AS群に比較してDM群において増加傾向が認められた. 血漿脂質はNC群に比べてAS群, DM群で高値を示し, Apo A-I, A-IIは健常者で高値を示し, 3群のうちDM群で最も低い値を示し, またApo BはNC群に比べてAS群, DM群で高値を示した. 線溶活性はDM群で低下した. 従って, 糖尿病の macroangiopathy と非糖尿病のそれとの間の差異に血漿・血小板β-TG, 血漿脂質, アポ蛋白, 線溶の関与の方が in vitro の血小板凝集能の関与に比べて大きいと考えられた.

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