日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
22 巻, 1 号
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  • 北澄 忠雄, 貞包 典子, 嶋田 和幸, 小沢 利男
    1985 年 22 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    自律神経機能検査ならびに血漿ノルエピネフリン (以下PNE), リンパ球β受容体の測定を行ない, 交感神経と副交感神経による循環調節機能に及ぼす加齢と高血圧の影響を検討した. 対象は正常血圧者 (140/80mmHg以下) 54名 (14~77歳) と本態性高血圧 (160/95mmHg以上) 36名 (40~78歳) である. 方法は Valsalva 試験, 70度起立試験, 寒冷昇圧試験, アトロピン (0.02mg/kg) 静注負荷試験を行ない, PNEと血漿レニン活性 (PRA) を測定した. 自律神経機能の評価は Valsalva 試験は第II相および第IV相における収縮期血圧に対する心拍数の回帰係数 (Baroreflex Sensitivity Index, BRSI), 起立試験は起立時心拍数, 血圧, PNEとPRAの変化, 寒冷昇圧試験とアトロピン負荷試験は心拍数と血圧の変化を観察した. β受容体はリンパ球を分離し125Iodocyanopindolol と結合させ結合容量と結合親和性を測定した.
    結果: 1) Valsalva 試験での第II相及び第IV相のBRSIは加齢と共に低下し (p<0.01), 高血圧群 (H群) は正常血圧群 (N群) に比べ第II相で有意に低下した (p<0.05). 2) 起立時の血圧低下度は加齢の影響が少ないが, 心拍数増加度 (ΔHR) は若年群に比し中老年群で有意に低かった. 安静時PNEは加齢に伴ない上昇した (r=0.315, p<0.05). ΔHRとPNEの増加度 (ΔPNE) との間に有意の相関があり, ΔHR/ΔPNEの値は加齢に伴って低下した (r=0.498, p<0.01). H群でも同様の傾向がみられた. (p<0.05). PRAの起立時の変化は加齢と共に低下した (p<0.001) がH群では有意でなかった. 3) 寒冷昇圧試験における心拍数増加は加齢により抑制された. 4) アトロピン負荷試験では加齢に伴ない心拍数の増加が低下した. 5) リンパ球β受容体結合容量と結合親和性は共に加齢の影響がなかった. 以上加齢と高血圧の影響で交感神経と副交感神経による循環調節機能の低下が認められ, 特に心拍数に関係した副交感神経機能の障害が顕著であった. β受容体結合能の成績から受容体以後の障害や心血管系の構築変化による機能不全も大きい役割を担っているものと考えられる.
  • 永川 祐三, 折茂 肇, 原澤 道美, 澤田 皓史
    1985 年 22 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    急性期を除く虚血性心疾患および脳血栓症を伴う動脈硬化症患者のうちの37例の耐糖能異常を示さない動脈硬化群 (AS群, 平均年齢68.4歳, HbA1: 平均±標準誤差, 7.1±0.1%), 29例の糖尿病群 (DM群, 平均年齢67.6歳, HbA1:10.2±0.4%) および健常群18例 (NC群, 平均年齢40.3歳, HbA1:6.9±0.3%) の3群を対象として, 血小板凝集能, β-トロンボグロブリン (β-TG), 血漿脂質, リポ蛋白, アポ蛋白, アンチトロンビンIII (AT-III), 線溶活性を測定し, 比較検討した. 血小板凝集能は比濁法を用いてADP, コラーゲン, アドレナリン, アラキドン酸による in vitro の血小板凝集能を, また Wu-Hoak 法による in vivo の血小板凝集能 (循環血小板凝集) をそれぞれ検討した. 血漿・血小板のβ-TGは radioimmunoassay 法により, アポ蛋白は一元免疫拡散法により測定し, 血漿AT-IIIは生理活性を, また線溶はユーグロビン溶解時間を測定した. その結果, ADP, コラーゲン, アドレナリン, アラキドン酸による血小板凝集能はいずれもAS群で最も亢進する傾向を示し, 次いでDM群, NC群の順に高かった. 循環血小板凝集ではNC群に比較してAS群, DM群で亢進傾向が示された. 血漿β-TGはDM群で最も高く, 次いでAS群, NC群の順であった. 血小板中β-TGもNC群, AS群に比較してDM群において増加傾向が認められた. 血漿脂質はNC群に比べてAS群, DM群で高値を示し, Apo A-I, A-IIは健常者で高値を示し, 3群のうちDM群で最も低い値を示し, またApo BはNC群に比べてAS群, DM群で高値を示した. 線溶活性はDM群で低下した. 従って, 糖尿病の macroangiopathy と非糖尿病のそれとの間の差異に血漿・血小板β-TG, 血漿脂質, アポ蛋白, 線溶の関与の方が in vitro の血小板凝集能の関与に比べて大きいと考えられた.
  • 臨床的検討
    小暮 晴一郎, 伴野 祥一
    1985 年 22 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1973年1月から1983年12月までの11年間に当内科で経験した初診時年齢40歳以上の先天性心疾患は94例 (男性39例, 女性55例) であった. 対象を外来患者に限ると, 40歳以上の心臓外来初診例2,177例中88例 (4.0%) である. 40歳以上の症例においても, 先天性心疾患はそれほど稀ではない. 疾患別には, 心房中隔欠損が66例 (70.2%) と2/3以上を占め, 以下, 心室中隔欠損9例, 動脈管開存7例, 心内膜症欠損4例, Ebstein 奇形3例, Fallot 四徴3例, Valsalva 洞動脈瘤破裂1例, 三房心1例の順であり, 初診時60歳以上の14例は, すべて心房中隔欠損であった.
    上記症例のうち, 当科受診までに先天性心疾患と診断されていたものは14例 (14.9%) のみであり, また, 当科初診時に初めて心疾患を指摘されたものが10例 (10.6%) あった. 40歳以前に自覚症状の出現したものは21例 (22.3%) に過ぎず, 当科初診時に40歳代のものでは48例中11例 (22.9%) が無症状であったが, 初診時年齢50歳以上では無症状例は46例中6例 (13.0%) と減少していた. 逆に, NYHA III, IV度の重症例は, 初診時年齢40歳代の48例中5例 (10.4%) から, 50歳代32例中10例 (31.3%), 60歳以上14例中8例 (57.1%) と増加し, 40歳代まで比較的軽症の症例でも加齢とともに悪化する傾向が認められた.
    初診後2年以上を経過した64例の追跡調査 (平均5.0年) では, 死亡3例 (うち1例は交通事故), 悪化7例であったが, 悪化例中5例は当科受診後まったく治療を受けていなかったものであり, 40歳以上の先天性心疾患でも適切な治療により症状の改善することが確認された. 根治手術施行例15例の経過はすべて良好であった.
  • 渋谷 大助, 浅木 茂, 佐藤 彰, 大原 秀一, 目黒 真哉, 後藤 由夫
    1985 年 22 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    当科で1979年6月より1983年1月までの3年半の間に緊急内視鏡検査を行ない, 活動性出血や新鮮凝血塊付着の為内視鏡的止血が必要と判断した例に対して純エタノール局注止血を施行した出血性胃十二指腸潰瘍は57例であった.そのうち60歳以上の25例を検討した. 平均年齢は66歳, 男女比は5.3:1と男性に多かった. 出血部位は胃潰瘍が20例80%で, 十二指腸潰瘍が5例20%あった. うち2例が球後部潰瘍であった. 胃潰瘍はC領域10例, M領域8例, A領域2例と比較的高位に発生したものが多かった. 多発例は40%を占めていた. 出血状態をみると, 噴水状出血が4例, 静脈性出血が4例, 新鮮凝血塊付着が17例あった. そのうち露出血管を有するものは13例あった. ショックを呈したものは15例60%あり, 大量出血例が多かった. 基礎疾患では悪性腫瘍及びその術後11例, 胆石症術後2例, 重症糖尿病3例, 心不全2例, その他が5例あった. 出血に対して外科手術を緊急に行なうには high risk の例が多かった. これらの25例に対して内視鏡的純エタノール局注止血を行ない全例止血し得た. 止血後に原疾患にて死亡した3例と上腸間膜動脈血栓症を合併し, 本法で止血後翌日待期手術を行なった1例を除く21例は保存的療法にて治癒し得た. 老年者の潰瘍出血は大出血例や出血をくり返す例が多く, 保存的療法では止血し得ない場合が少なくなく, また重篤な合併症を有する例では外科手術の予後も良くないというのが一般的な考えであった. しかし, 内視鏡的純エタノール局注止血法は確実な止血効果を有し, 従来緊急手術しかなかった症例に対しても止血し, 待期手術や保存的療法のみで治療しうるようになった. とくに, これまで外科手術しか救命の方法がなく, 死亡率も高かった重篤な基礎疾患を有する老年者胃十二指腸潰瘍大量出血例に対しても本法が有効で, 保存的に治療しうるようになった意義は極めて大きいと考える.
  • 池田 俊美
    1985 年 22 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    臨床的に Alzheimer 病と診断された患者13例 (平均年齢: 55.4歳), 対照として知能障害を認めない12名の健常者 (同上: 51.4歳), さらに, Alzheimer 型老年痴呆患者6例 (同上: 83.5歳) と高齢の健常対照者4名 (同上: 85.2歳) について染色体検査を実施した.
    染色体標本は被検者の末梢血を全血培養して作製した. 標本を検鏡し, 異数性細胞の出現頻度を調べ, 同細胞の核型分析を行った. 異数性細胞の出現頻度 (%) は, 各被検者の分裂中期細胞50個あたりに検出された高二倍性細胞 (染色体数が47および48) と低二倍性細胞 (同上が44および45) の合計で求められた.
    異数性細胞の出現頻度は, Alzheimer 病患者群では平均で18.0%, 同年齢の健常者群では平均3.5%で, 統計学的に明らかな差が認められた (p<0.01). 一方, Alzheimer 型老年痴呆患者群は平均で12.6%の異数性細胞の出現頻度を示し, 同年齢の高齢健常者群の出現頻度10.5%とは有意差が認められなかった (p=0.1). また, Alzheimer 病患者群と Alzheimer 型老年痴呆患者群の異数性細胞の出現頻度を比較したところ, Alzheimer 病患者群はその年齢がはるかに若いにもかかわらず, 出現頻度は明らかに高率であった (p<0.01).
    以上から, 異数性細胞の出現頻度に関するかぎり, Alzheimer 病患者群と Alzheimer 型老年痴呆患者群とでは, 頻度の程度に相異があることが認められた. 核型分析の結果, Alzheimer 病患者群および Alzheimer 型老年痴呆患者群で高二倍性および低二倍性を示した染色体はC-X群に多かった. さらに, Alzheimer 病患者と健常者のリンパ球と血清を交換培養し, 異数性細胞の出現頻度を求めた結果, Alzheimer 病患者群における異数性細胞の出現頻度の増加は, 血清と無関係であり, 患者リンパ球自体に原因を求めるべきであることが示唆された.
  • 朝長 正徳
    1985 年 22 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年痴呆では大脳皮質が広汎に障害されるが, とくに cholinergic system がかなり選択的に障害されるといわれる. しかし, 老年痴呆の病変の一つであるアルツハイマー原線維変化の分布は皮質下にもおよび, 障害はさらに広汎である. そこで adrenergic system として重要な青斑核について検討した.
    老年痴呆10例, MID 6例, 対照12例について, 青斑核の神経細胞数を橋上部断面でかぞえ, 左右の平均であらわした. 青斑核の神経細胞数は高齢で減少するが, 老年痴呆の4例 (40%) でより減少していた. MIDでは年齢相当の減少であった. 青斑核の変化は75歳以下の例で高度であり, また, アルツハイマー原線維変化の有無および nucleus basalis の変化と関連し, 大脳皮質の変化の程度とは平行しなかった. 老年痴呆における青斑核の変化は nucleus basalis の変化に関連していると考えられる.
  • 木谷 光博, 小林 祥泰, 山口 修平, 岡田 和悟, 村田 昭博, 恒松 徳五郎
    1985 年 22 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    器質的脳疾患の既往を有さず, かつ糖尿病・高血圧症・内分泌疾患などの全身疾患を有さないCT上正常と思われる14歳から90歳までの67例を対象とし, 天幕上及び天幕下における加齢に伴う萎縮について, 従来最も普及している一次元法 (Cranio-Ventricular Index 以下CVI) と, 我々がすでに報告した二次元法 (Ventricular-Area Index 以下VAI, Brain-Atrophy Index 以下BAI) を用いて検討を行った.
    大脳に関しては, CVI, VAI, BAIのいずれも年齢と有意の相関を示した. また, CVIに比較しVAI, BAIは年齢とより強く相関していた. 小脳・脳幹においては, すべての index は年齢と有意の相関を示さなかった. しかし, 大脳-小脳・脳幹間の index 相互の検討では, BAI間に有意の相関を認めた. すなわち, 小脳・脳幹は大脳と共に加齢に伴いある程度の萎縮を示すが, その変化は大脳に比較し明らかに軽度なものと考えられる.
  • 1985 年 22 巻 1 号 p. 53-91
    発行日: 1985/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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