日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者診療の諸問題
原澤 道美
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1986 年 23 巻 2 号 p. 123-130

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抄録

昭和54年4月より昭和60年6月までの6年間に, 当科に入院した男482例, 女299例の計781例について疾患統計をとるとともに, 同期間に当科を退院した652名にアンケート調査を行ない, 50歳以上の男152例, 女119例の計271例の回答について解析し, 罹患している疾患の特徴, 退院後の患者の状態, および介護の実態や問題点などについて検索を加え, 以下のような成績を得た.
1) 加齢とともに呼吸器疾患, 神経疾患, 循環器疾患の入院頻度は増加し, 反対に消化器疾患, 内分泌・代謝疾患などは減少する.
2) 加齢とともに, 一人の患者のもつ疾患数は増加する.
3) 平均入院日数は, 20~30日の間にピークがあるが, 加齢とは関係しない. 3カ月以上の長期入院は約10%であるが, 呼吸器疾患 (主として肺癌), 神経疾患 (脳血管障害など), 腎・泌尿器疾患 (腎不全など) などが多いが, 脳血管傷害ではリハビリテーションのために, 肺癌や腎不全では疾患が重篤なために, それぞれ長期入院となっている.
4) 転帰は完治はわずかに1%で, 軽快50%, 不変20%, 死亡15%, 転科10%である.
5) 当科退院後81%が自宅に退院しているが, その後普通の日常生活を送っているものは約60%で, 寝たきりの状態3.7%, 常時おむつ使用約2%, 中等度以上のぼけの進行2.6%である. また35%が入退院を反復している.
6) 子供や孫と同居は約半数に過ぎず, 老人夫婦のみが26%, 独りぐらしが9%を占めている.
以上より, 老年者に対する医療体系として, 在宅ケアーの一層の充実とともに, 急性期の患者を対象とする従来の病棟とは異なった, リハビリテーションやケアーを主にし, しかも急性病棟と密接に連係している, 慢性病棟の新設が, 必要と思われる.

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