日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者の急性心筋梗塞におけるカテコールアミン分泌に関する検討
古賀 英俊森 秀樹厨 平賀来 俊橋場 邦武
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1986 年 23 巻 6 号 p. 559-564

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抄録

老年者の急性心筋梗塞におけるカテコールアミン分泌に関して, 急性心筋梗塞初回発作で, 発症より12時間以内に入院した41例を対象として検討し, 以下の成績を得た.
(1) 血中アドレナリンは測定した33例中51.5%, 血中ノルアドレナリンは87.9%と高率に異常高値が認められたが, 65歳以上の老年群は, アドレナリン20%, ノルアドレナリン70%と64歳以下の壮年群のそれの65.2%, 91.3%に比較して低頻度であった. 尿中カテコールアミンの異常高値出現頻度も, ほぼ同様の結果が得られた.
(2) 血中アドレナリンの最高値も, 老年群は92.2±76.5pg/mlと, 壮年群の215.5±130.9pg/mlに比較して有意に低値 (p<0.01) であったが, 血中ノルアドレナリンの最高値には両群間に有意差は認められなかった.
(3) 第1病日から第7病日までの尿中アドレナリンの総排泄量は, 壮年群の107.0±69.4μgに比較して, 老年群は60.6±31.5μgと有意に低値 (p<0.05) であった. 尿中ノルアドレナリンの総排泄量も,老年群は有意に低値であった (p<0.05).
(4) 老年群の入院時の心拍数は, 平均63.2/分であり, 壮年群の75.7/分に比較して有意に少なく (p<0.05), 入院時の収縮期血圧には両群間に有意差は認められなかった. これは, 第1病日の血中アドレナリンは老年群で有意に低値であるが, 血中ノルアドレナリンは, 両群間に有意差がなかったことと関連しているものと考えられる.
(5) 老年群と壮年群では, CPKmax, 肺動脈拡張期圧, および心係数には有意差は認められなかった. 以上の成績より, 老年者では交感神経系, とくに副腎髄質の反応が低下している可能性が示唆された.

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