日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
NMR-CTに於ける脳室周囲高信号域の臨床的意義の検討
小野 修一松沢 大樹山田 健嗣山田 進吉岡 清郎川島 隆太菱沼 隆
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1987 年 24 巻 4 号 p. 326-334

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抄録
MRIに於ける脳室周囲高信号域 (Periventricular hyperintensity: PVH) の意義について検討した. PVHは, X線CTに於ける Periventricular lucency に相当すると考えられるMRI画像上の側脳室周囲白質内に存在する高信号域である. X線CTによる研究では, 水頭症, 或いは脳の虚血病巣を表すとされているが, MRIによるPVHと加齢, 及び脳の虚血性疾患の関係について検討し, 考察を加えた. 対象は, 年齢10歳以上の正常例244例, 各種の虚血性脳血管障害112例である. NMR-CT機は約0.14 Tesla の常電導型, パルス系列はCPMG法を用いた. 各症例のPVHの存在を視認し, PVHを持つ症例の全症例に占める割合を, 各年代毎に算出した. それによると, 正常例に於けるPVHは, 30歳台迄約5%前後と低頻度であったが, 40歳台以降では, 加齢とともにその頻度が有意差を以て急増していた. また, 虚血性脳血管障害の症例では, 更に有意にPVHを持つ症例の割合が著増していた. 部位別の検討では, 正常例・虚血症例ともに, 前角・体部周囲にPVHが高頻度であった. 以上の結果より, PVHが, 加齢と脳の虚血に共通する要素と関連があると考えられた. 1つは, 側脳室周囲白質が血管支配の境界領域で, 虚血病巣の好発部位であるため, それらの病巣がPVHとして表される機序が考えられた.また, もう1つのPVH増加の機序として, 脳脊髄液循環の lesser pathway である実質内血管への吸収能の, 梗塞巣・動脈硬化等による障害に起因する細胞外液量の増加を反映する事も考えられ, PVHが, 脳の虚血状態, 或いは, 動脈硬化等の加齢変化と関係し, 脳の老化の重要な指標となると考えられた.
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