抄録
高齢者本態性高血圧症入院患者30名 (年齢77.6±6.1歳, 男9, 女21) を対象とし, 4週間の観察期に続いてプロプラノロール徐放剤 (インデラルLA(R)) 60mgを1日1回朝食後に12週間連続経口投与し, 投与前後における血圧変化, 血漿プロプラノロール濃度, 24時間連続記録心電図から平均分時心拍数, 最低分時心拍数, さらに血漿レニン活性について検討した. 1) 血圧は収縮期, 拡張期共に有意に低下した. 2) プロプラノロール徐放剤初回投与時に血漿プロプラノロール濃度を経時的に測定したところ, 投与5時間後に41.5±37.7ng/mlとピークとなり, 24時間後も28.6±30.5ng/mlであった. また投与12週目の血漿プロプラノロール濃度は投与前値61.8±50.5ng/ml, 5時間値99.8±66.7ng/mlとなり高値で個人差も大であった. 3) 平均及び最低分時心拍数は共に有意に減少したが, 最低分時心拍数の減少は平均分時心拍数に比して軽度であった. 4) 収縮期血圧変化と12週目5時間後血漿プロプラノロール濃度とはr=0.645の粗な相関を認めたが, 血漿レニン活性前値並びに変化と降圧との間には有意な相関を認めなかった. 5) 副作用は6例に認められ, 5例は気管支肺炎併発, 1例は徐脈性不整脈のため投薬中止とした. 高齢者高血圧に対するプロプラノロール徐放剤投与に際しては血漿プロプラノロール濃度の高値, 個人差を考慮し注意深い観察が必要で, 慎重に投薬されるべきと考えられた.