日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
睡眠障害
森 温理
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 27 巻 1 号 p. 12-17

詳細
抄録
加齢に伴って睡眠は質, 量ともに変化する. 一般に高齢者では就床時間, 起床時間ともに早くなり, 日中に仮眠をとる多相性睡眠型となる. 睡眠ポリグラフを用いて若年者の睡眠と比較すると, 入眠潜時の延長, 総睡眠時間の短縮, 夜間覚醒回数の増加, stage 1など浅い睡眠の増加, stage 3, stage 4など深い睡眠の減少, stage REMの減少と周期の前方偏位などがみられる.
高齢者には睡眠障害とくに不眠を訴える例が多い. 高齢者の不眠には一過性および状況因性のいわゆる精神生理的要因によるものも多いが, うつ病などの精神疾患や薬物・アルコール摂取に伴う不眠, 中枢神経系疾患とくに最近急速に増加しつつある痴呆性疾患 (脳血管性痴呆, アルツハイマー型痴呆) に伴う不眠などがある. また高齢者に多くなる睡眠時無呼吸症候群に伴う不眠も重要である.
睡眠障害の対策として, まずその原因を明らかにして取り除くようにすること, 現境要因の改善や規則的な睡眠覚醒リズムを確保するようにすること, その上で高齢者の薬物動態や副作用を十分考慮して適切な睡眠薬を選択し使用することである.
著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top