日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
急性心筋梗塞の剖検例における初発梗塞と再発梗塞の心電図所見および梗塞巣の位置関係
荻原 雅之青木 久三宮川 浩一信田 高明新美 達司山本 俊幸鈴木 孝弘山本 正彦
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1991 年 28 巻 1 号 p. 52-57

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抄録

老年者580剖検例に認めた貫壁性の急性心筋梗塞64例は, 急性梗塞巣のみの初発梗塞35例と, 陳旧性梗塞巣を伴った再発梗塞29例であった. 病理解剖死因は, おもに心不全, 心破裂, 肺炎などであった. 心破裂は再発梗塞より初発梗塞に多く (p<0.01), 心不全および肺炎は両者間で有意差がなかった.
梗塞発症前の心電図では, 虚血性ST-T変化が初発梗塞の57%と多く, また異常Q波を再発梗塞の52%に, 正常心電図を21%に認めた. 異常Q波は大梗塞 (長径4cm以上の陳旧性梗塞) に, 非Q波は小梗塞 (1cm未満) に高頻度であった (p<0.01). 新鮮梗塞巣と陳旧性梗塞巣の位置関係から再発梗塞を異部, 同部, および異同部梗塞群に分類した. これら三群の頻度はほぼ同じであった. 異部梗塞群を新鮮梗塞巣と陳旧性梗塞巣の位置関係から隣接, 対側および隣対梗塞群の三群に分類すると対側または隣対梗塞群の頻度が高かった (p<0.05およびp<0.01). 急性梗塞死亡例では, 陳旧性梗塞巣の対側部に発症した再発梗塞に, 梗塞死は生じやすい.

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