日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
超高齢者脳血管障害の臨床病理学的検討
稲垣 俊明橋詰 良夫野倉 一也山本 俊幸新美 達司三竹 重久小鹿 幸生山本 正彦
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1991 年 28 巻 2 号 p. 145-151

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抄録

名古屋市厚生院において, 昭和56年から昭和61年までの老年者剖検例295例の中で, 脳血管障害 (以下CVDと略す) が90歳以上の超高齢者で32例 (男8例, 女24例), 60歳より89歳までの高齢者で174例 (男95例, 女79例) が認められた. 今回, 超高齢者のCVDの特徴を明らかにするため, 臨床病理学的に検討し, 以下の結果を得た.
病理学的にみたCVDの出現頻度は60歳代が58.3%であり, 70歳代が68.8%, 80歳代が75.1%と加齢とともに増加したが, 90歳以上では64%と減少した. CVDの中で脳梗塞は高齢者で79.9%であり, 超高齢者で81.2%であった. 両群とも2カ所以上の多発性脳梗塞が被殼, 尾状核, 視床, 前頭葉の白質・皮質に高率に認められた. 超高齢者では高齢者に比して, 大梗塞の頻度は同程度であったが, 中梗塞は減少傾向, 小梗塞は増加傾向を示した. 脳出血は高齢者で16.1%であり, 超高齢者で12.6%であった. 超高齢者ではレンズ核, 皮質下にそれぞれ50%を認め, 大出血が多くみられたが, 症例が少ないため, 今後の検討課題と考えられた.
臨床的には, 超高齢者では高齢者に比し精神症状, 前頭葉徴候, oral dyskinesia が有意に高率であった. また, 超高齢者では明らかな脳卒中発作を呈しない例が多くみられ, それらは全例脳梗塞であった. risk factor として高血圧が考えられた.

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