抄録
老年者に存在する原疾患の明らかでない大動脈弁逆流(AR)の成因として, 加齢に伴う大動脈弁の変性, 弁輪部の拡大等の関与が推定されるが, 未だ十分に解明されたとは言い難い. 今回, 著者らは65歳以上の老年者189例を対象に超音波心断層法および二次元ドプラ血流映像法により大動脈弁逆流の有無ならびにその重症度, 大動脈弁近辺の形態学的計測, 大動脈弁変性の指標としての大動脈弁エコー強度ならびに血圧との関連を検討し, 以下の成績を得た.
(1) ARの有無, 重症度と年齢, 性別ならびに僧帽弁逆流合併の有無については関連を認めなかった.
(2) AR重症例では収縮期血圧上昇と拡張期血圧低下を認めた.
(3) 超音波心断層図より求めた心室中隔と大動脈前壁のなす角度とARの有無, 重症度間には関連性を認めなかった.
(4) 大動脈弁輪部径は末梢側でAR重症例で拡張傾向を認めたが, より中枢側では変化を認めなかった.
(5) 大動脈弁エコー強度増強はARを有する群でARを有さない群に比し高頻度に認められた.
以上より, 老年者大動脈弁逆流の成因としては大動脈弁自体の変性, 変形, 石灰化が最も考え易く, 大動脈弁輪部径の拡大や血圧の変化は, 大動脈弁逆流のもたらす血行動態の変化による可能性が大きいと考えられた.