日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脳血管障害後片麻痺患者における立位バランス, 日常生活動作, 起居移動動作に対する阻害因子の検討
野垣 宏
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1992 年 29 巻 4 号 p. 285-292

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抄録

半側空間無視は日常生活動作または歩行の最も重要な阻害因子のひとつとして, 従来より検討が重ねられてきた. 今回著者は, 脳血管障害後片麻痺患者において, 2本の花の絵の模写を施行することにより半側空間無視の重症度分類を行い, その座位または立位バランス, 日常生活動作, 起居移動動作におよぼす影響を検討した.
対象および方法: 発症後1カ月以上経過した一側テント上病変を有する脳血管障害後片麻痺患者121例について, 年齢, 発症からの経過月数, 麻痺側, Brunnstrom stage, 健側筋力, 同名半盲, 関節位置覚, および2本の花の絵の模写の際の書き落とし区画数による半側空間無視の重症度が, 座位または立位バランス (平衡機能計による重心動揺面積測定), 日常生活動作 (Barthel index), 起居移動動作 (二木の分類) におよぼす影響を検討した.
結果: 1) 座位または立位バランス, 日常生活動作, 起居移動動作に影響をおよぼす因子として年齢, 片麻痺の重症度, 健側筋力低下, 半側空間無視, 関節位置覚障害が考えられた. 2) 中等度, または重度の半側空間無視は, 座位または立位バランス, 日常生活動作に大きな影響をおよぼすことが示唆された.
中等度または重度の半側空間無視は座位または立位バランス, 日常生活動作に大きな影響をおよぼすことが明らかとなり, 年齢, 片麻痺の重症度, 健側筋力などと考え合わせ, 予後予測, ゴール設定に重要な情報を与えるものと考えられた.

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