日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
巨脾を呈した脾結核症の1例
佐藤 忠弘森 眞由美稲松 孝思渡辺 二郎高橋 忠雄江崎 行芳
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キーワード: 脾臓, 結核, 不明熱, 老年者
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1992 年 29 巻 4 号 p. 305-311

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抄録

巨大な脾腫を呈し, 脾臓を主体とした結核症の1例を報告する. 患者は79歳男性で, 既往に15歳時, 肺門結核. 1990年初めより微熱, 5月に入り高熱が出現し, 発熱, 体重減少を主訴に入院. 腹部CT検査で数個の低吸収域を伴った脾腫, 大動脈周囲リンパ節腫大を認め, 鼡径部にリンパ節を触れた. 悪性リンパ腫を疑い鼡径部リンパ節生検, 試験的化学療法を行ったが診断確定せず, 開腹術施行. 消化管, 肝, 腹膜には異常は認めなかったが, 大動脈周囲リンパ節腫大を認め, 脾は多数の結節を伴って硬く腫大しており, 脾摘を行った. 脾臓は20×20×8cm, 700gで1mmから約5cm迄の多数の黄白色の不整な結節を有していた. 結節は密な類上皮細胞増生からなり, 多数の多核巨細胞を認めたが, 乾酪壊死巣は極僅かであった. 脾臓の塗抹染色で抗酸菌を認め, 後に結核菌が培養された. 抗結核療法により, 炎症反応は改善した.
脾臓以外に明らかな結核病巣を認めない, いわゆる原発性脾結核症は最近では非常に稀である. 本症例は大動脈周囲リンパ節の腫大があり, 原発性とは断定出来ない. しかし, 原発性およびそれに近い脾結核症は1965年以降5件6例しか報告されておらず, 本症例は非常に稀な結核症の1例と考えられた.

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