日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老化および動脈硬化における糖たんぱく代謝
II. 実験的研究: Progeria-like syndrome における血清および組織糖たんぱく体と膠原について
伊藤 清昭
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1966 年 3 巻 3 号 p. 246-255

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抄録

Progeria-like syndrome において血清, 組織の糖たんぱく体と膠原を測定し, 老化に関与する Calciphylaxis の重要性, Calcium 沈着に先行すると思われる結合織代謝の変化, 血清糖たんぱく体と結合織代謝の変化との関係などを検討した.
Wistar 系ラットを対照群I (実験前屠殺), 対照群II (無処置で飼育), D2群 (Calciferol 毎日経口投与), DHT群 (Dihydrotachysterol 毎日経口投与), DS併用群 (D2+Dextran Sulfate 毎日静注) に分けた.
実験開始後約4週で, D2群は体重減少し老化の様相を呈した. DHT群は投与量が少なかったためか外見上明らかな変化を示さなかった. DS併用群はD2群に比し体重減少が少なく, 老化の様相も軽度であった. 各群とも屠殺し, 大動脈, 肋軟骨, 皮膚について Uronic acid (UA) Hexosamine (HA), Hydroxyproline (×100/13.2=Collagen) を測定し, 血清ではHAを測定した. 大動脈, 皮膚について組織学的検索を行なった.
対照群IIはIに比し大動脈でHAの減少傾向, 肋軟骨でHAの増加傾向を示し, Collagen は各組織で増加した. D2群は対照群に比し大動脈ではUA, HAは変化少なく肋軟骨, 皮膚では両者とも減少した. Collagen は各組織で増加を示した. DHT群では主として Collagen の増加がみられた. DS併用群は各組織においてUA, HAは対照群に近い値を示し Collagen の増量もD2群より軽度であった. 組織所見でD2群は大動脈中膜より内膜にかけて弾力線維の断裂消夫, PAS陽性物質の増量, Caの沈着がみられた. DS併用群は大動脈のPAS陽性物質の増量とCa沈着は軽度であった. DHT群の大動脈は変化が乏しかった. 血清HAの平均値は対照群Iに比しIIでは高く, D2群ではさらに高い. 血清HAと組織HAの変化は相関をみなかった. 以上の点から, Progeria-like syndrome では結合織代謝に関して生理的老化に似ていること, Ca沈着が少ないと老化の様相が起こりにくいこと, Ca沈着が少ない時期に結合織代謝に変化がみられること, 血清HAの変化は組織の代謝をある程度反映するがその関係はさらに複雑であることなどが考えられる.

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