日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
動脈硬化症にこおける血漿燐脂質, とくにその各分画動態に関する研究
田代 一三夫
著者情報
ジャーナル フリー

1966 年 3 巻 3 号 p. 261-270

詳細
抄録

目的: 動脈硬化症における血漿脂質に関する報告は主にコレステロール (=Chl) およびC/P比についてであり, 燐脂質 (=Phl) 分画についての報告は少ない. われわれは本症血清Phl分画動態および2, 3の薬剤の影響について検討した. 方法: 脂質を Folch 法で抽出し, 薄層クロマトグラフィー法で分画, Bartlett 法で燐を定量した. 分画は原点より Lysolecithin (LLe), Sphingomyelin (=Sph), Lecithin (=L), Phosphatidylinositol+Phosphatidylserine (=PI), Phosphatidylethanolamine (=PE), Solvent Front〔主に Phosphatidic Acid (=PA)〕の6つに分けた. この方法は再現性よく回収率92~96%であった. 結果: 20才代健常男子の血漿総Phlは160mg/dlで, 中L70%を占め圧倒的に多く, 以下Sph 13%, LLe6%, PI2.9%, PE3.2%, PA1.5%であった. 総Phl各分画とも10日間隔で有意に変動せず, 比較的一定に保たれているようである. 50才代のものでもこれと有意差はなかったが, 動脈硬化症ではこれよりL, PE, PIおよび総Phlが高値を示し, 総Chl, C/P比も有意に高かった. 本症と血液凝固性の関連を考えるとき, PI, PEが高値を示すことは興味深いものがある. これに Dextransulfate (=DS) あるいは Ethylnandrol (Et) を投与するに, 前者では総Phl, L総Chlは低下し, PI, PEは不変, 後者では総Chl, PI, C/Pが低下しPE総Phlは不変であった. 断案: 1) 健常血清Phl中Lが70%を占め, 年令および日による変動は総Phlおよび各分画とも比較的少ない. 2) 動脈硬化症では血清総Phl, L, PI, PE, 総Chl C/P比が有意に高値を示した. 3) DSおよびETの血清Phlに及ぼす影響を検した.

著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事
feedback
Top