日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
たんぱく同化ステロイドの長期連続投与と血清コレステロール値の変動
猪狩 淳林 康之牛尾 盛保三木 征治岩藤 基宏
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1966 年 3 巻 4 号 p. 275-282

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抄録

たんぱく同化ステロイドの長期連続投与を行ない, 血清コレステロール値の変動を検討した.
対象は厚生荘療養所入院患者94例で, すべて脳血管障害, 動脈硬化症の患者である.
薬剤の血清コレステロールに対する効果をみるのが目的であるので, いわゆる Double Blind Method による薬剤投与を行なった. 薬剤は試薬, Placebo ともに1日3Cap., 毎食後分3投与を1年間行ない, 毎月1回, 血清コレステロール値とGOT, GPT, LDH, アルカリ性フォスファターゼ, 黄疸指数, 硫酸亜鉛混濁試験を測定した.
その結果試薬投与群は投与1ヵ月後から著明な低下を示し, 46例中29例 (63%) が投与前値の20%以上の低下をみた. 2, 3ヵ月と漸次低下をつづけ, 以後ほぼ一定の値を維持し, Placebo 群と比較して有意の差が認められた. なお, 試薬投与中止後のコレステロール値はふたたび上昇し, 投与前値に復する傾向がみられた.
GOT, GPTは試薬投与群で約30%に上昇がみられたが, 異常値を示した例はわずかで, ほとんどが正常上限の値で, 継続投与により高値を持続するものはなかった. LDH, アルカリ性フォスファターゼ, 黄疸指数, 硫酸亜鉛混濁試験には顕著な変動は認められなかった.
たんぱく同化ステロイドの血清コレステロール値に対して薬剤投与中は著明な低下作用をあらわすが, 投与中止にこより低下したコレステロール値はふたたびもとの値にもどることが推定された.

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