抄録
老人保健施設 (以下, 老健施設と略す) は, 病院に入院している要介護老人の家庭復帰を促すために開設された. ところが, 実際の退所先には家庭の他に, 病院, 特別養護老人ホーム (以下, 特養と略す), 他の老健施設等があり, 家庭復帰した利用者は全体の半数に留まっているといわれている. 老健施設利用者の家庭復帰にはどのような要因が関与しているか明らかにするために, 一老健施設利用者の属性や利用状況を退所先別に比較, 検討した (比較I:「退所先家庭群」対「退所先病院群」, 比較II:「退所先家庭群」対「退所先特養・他の老健施設群」). ショートステイを除く4年間の全入所者389名 (平均年齢81.1±6.0歳, 女性67.1%) を対象に, 入所記録から利用者の年齢, 性別, 入所前の生活場所, 入所期間, 退所先, 日常生活動作能力 (以下, ADLと略す), 知力障害の有無を調べた.
多重ロジスティック回帰の結果, 比較Iでは性別は男性, 入所期間が長い者, 家庭からの入所者, ADLレベルの高い者で家庭に戻った者が多かった. 一方, 比較IIでは, 家庭からの入所者, 入所期間が短期, ADLレベルの高い者で家庭に戻った者が多かった.
今回の調査対象施設では, 医療機関から老健施設に入所した者は再入院しやすく, 老健施設の当初の目的であった「病院から家庭への通過施設」として運営されることは困難であることが示唆された. 利用状況だけでみる限りでは老健施設は専ら「要介護老人の在宅ケア支援施設」として利用されていると考えられる. 入所の早い段階で利用者の退所先に影響を及ぼす要因を評価して家庭復帰の可能性を検討すれば, 入所者の退所先を予測するうえで有用となろう.