抄録
患者は80歳, 女性. 前胸部痛と全身倦怠感を訴え近医を受診し, 胸部X線写真で心陰影の拡大と心電図異常を指摘され当科を紹介された. 聴診上, 心音の減弱ならびに特異的な摩擦音 (water-wheel murmur) を聴取した. 胸部X線写真と胸部CTで心嚢腔に free air を認めた. 心電図上広範囲なST上昇および著明な徐脈を認め, 心外膜炎を伴った心嚢気腫と診断した. 心外膜炎の治療に加え徐脈に対して一時的ペースメーカーを留置した. 血行力学的改善は認めたが, 全身状態は改善せず, 多臓器不全状態のため死亡した. 死後の心嚢腔造影により心嚢腔と消化管との交通が証明された. 心嚢気腫は非常に稀な疾患であり文献的考察も含め報告した.