日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢男性の血小板数および血小板容積の変化ならびにそれらの変化に及ぼす諸因子の影響
嵯峨 孝青山 隆彦竹越 忠美
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1995 年 32 巻 4 号 p. 270-276

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抄録

血小板は脳血栓や心筋梗塞などの血栓症発症に深い関係をもつ. 特にサイズが大きい血小板は血小板内酵素活性が高く, 粘着・放出さらに凝集能も亢進しており, 血栓形成に積極的に関与する. すなわち, 血小板数 (PLT) と平均血小板容積 (MPV) の変動は血栓形成状態を反映すると思われる. 高齢者では血栓症が多発するが, 高齢者のPLTやMPVについての検索は比較的少ない. そこで, 血栓性疾患, 血液疾患, 肝疾患あるいは悪性腫瘍などが認められない男性の血小板パラメーターを測定し, 高齢男性のPLTおよびMPVの変化ならびにそれらの変化に及ぼす諸因子 (高血圧, 高脂血症, 糖尿病, 肥満, 喫煙・飲酒習慣) の影響を検討した. 対象は30~83歳の男2,061例 (30歳代264例, 40歳代810例, 50歳代742例, 60歳代209例, 70歳代32例および80歳代3例) である. なお, 30~34歳の36名 (平均年齢32.6±1.2歳) を低齢群, 70歳以上の35名 (73.0±3.5歳) を高齢群とした. 高齢群は低齢群に比し高血圧および糖尿病の頻度は有意に大あるいは大なる傾向, 喫煙習慣の頻度は小なる傾向であった.
年齢の増加とともにPLTおよび血小板クリットの平均値は有意に減少, 血小板サイズ分布幅およびMPVの平均値は有意に増加もしくは増加傾向を認めた. 高血圧者, 糖尿病者および肥満者はPLT減少傾向およびMPVの有意の増加ないし増加傾向, 高脂血者はPLT増加傾向, 喫煙者はMPVの減少傾向, 低齢群飲酒者はPLT減少傾向を示した. そして, PLTおよびMPVの増減に及ぼす年齢, 平均血圧値, 中性脂肪値, HDL-コレステロール値, LDL-コレステロール値, 空腹時血糖値, 喫煙・飲酒習慣の影響を解析すると, PLTの増減には中性脂肪値と年齢の影響が大きく, MPVの増減には平均血圧値の影響が大であった.
PLTは血清中性脂肪値の影響を受けるが, 加齢に伴い減少する. 高齢者のMPVは低齢者に比し増加傾向にあるが, これは単に生理的加齢に伴う変化ではなく, むしろ高血圧合併が高齢者に高頻度であることによると考えられた.

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