日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
食道平滑筋肉腫の1例
白石 賢子高橋 忠雄橋本 肇野呂 俊夫日野 恭徳平島 得路黒岩 厚二郎山城 守也田久保 海誉
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キーワード: 平滑筋肉腫, 食道
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1995 年 32 巻 4 号 p. 286-291

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抄録

今回, 我々は比較的まれな疾患である食道平滑筋肉腫を経験したので報告する. 症例は73歳の男性で, 嚥下障害と嘔吐を主訴に1988年10月当センター入院し, 食道造影, CT, 内視鏡検査等にて食道下部に隆起性腫瘍病変を認め, 同年12月右開胸開腹食道切除, 頚部食道胃吻合術施行. 腫瘍は食道内腔および食道壁外へ腫瘤を形成し, 腫瘍の大きさは11×9×5cmであった. 病理組織学的には腫瘍細胞が束状・渦状に密に配列し, 核分裂像が散見された. また, 腫瘍の静脈浸潤像も認められ食道平滑筋肉腫と診断した. 術後に左第4肋骨, 右胸壁に転移を認め, それぞれ radiation を施行し, 腫瘍痛の消失をみた. しかし, その後右腸骨転移, 腰椎々体に次々に多発性に転移が出現し, 術後3年4カ月で死亡した. 剖検時局所再発はなく, 肝, 横隔膜, 両腎, 肋骨, 腸骨, 胸骨および全脊椎骨にそれぞれ血行性転移が認められた. 食道平滑筋肉腫の転移例の報告は少ないが, 肝転移が最も多い. 血行性転移への何らかの有効な術後補助療法が必要と考えられた.

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