日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
家族からみた最終入院時における高齢患者の病識の検討
癌患者と非癌患者の比較
名倉 英一柴田 昌子本城 秀次遠藤 英俊山田 英雄井形 昭弘
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1995 年 32 巻 8-9 号 p. 571-580

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抄録

死亡した最終入院における患者と家族の病識と考えについて, 死後, 家族からアンケート調査をした. 対象は平成4年に当院で死亡した患者177例のうち93例の家族で, 回答数は65 (回収率69.9%) で, 患者の年齢は46~69歳は32例, 70~97歳は33例で, 癌患者34例, 非癌患者31例であった.
検討した項目はアンケートの主な内容である, 入院当初の病気の見通し, 気持ち, 病気の認識, 病状説明に対する納得, 家族が病名を知らせたか, など9質問であった. また, 癌患者には癌の告知は行われていなかった.
解析の結果, 以下のことが明らかとなった. (1) 70歳以上の患者で, 入院当初,「ほぼ治る」と見通していた割合は, 癌患者, 非癌患者とも, 70歳未満より有意に低く, 亡くなる直前,「自分が死ぬとは思っていなかった」割合は70歳未満は70歳以上より有意に高率であった. さらに, 70歳以上の癌患者においては70歳未満よりも, 入院当初,「ほぼ治らない」と考えていた割合は有意に高率であった. (2) 癌患者の家族は, 入院当初, 癌患者自身より, 有意に低い率で「ほぼ治る」と考え, 有意に高率に「ほぼ治らない」と見通していた. (3) 自分の病気については, 癌患者は非癌患者より,「病気を知っていた」割合は有意に低く, かつ,「他の病気と思っていた」割合は有意に高かった. また, 癌患者の病気の説明に対する「あまり, または, ほとんど納得していなかった」割合は非癌患者より有意に高かった. (4) 家族が患者に病気を教えた率は, 癖患者では11.8%と非癌患者の38.7%より有意に低率で, 逆に教えなかった家族は, 癌患者で73.5%に達し, 非癌患者の22.6%より有意に高率であった.
以上の結果は, 最終入院時における高齢者の特徴と癌患者の特殊性を明らかにするとともに, 患者の意志を尊重した上でのインフォームドコンセントに基づく末期医療の必要性を示すものと考えられる.

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