日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年期痴呆患者における心機能の評価
小林 康孝羽生 春夫杉山 壮阿部 晋衛高崎 優前畑 幸彦勝沼 英宇
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1995 年 32 巻 8-9 号 p. 587-591

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抄録

高齢者における心機能評価は, その予後を左右するものとして非常に重要である. 特に痴呆患者ではその種類によっては病態が大きく異なるため, 病気の治療および進行の予防を行う上でも必要と思われる. 今回, 老年期痴呆患者における心機能を, 心エコーを用いて評価した.
対象は Binswanger 型痴呆 (以下BD) 11例, それ以外の脳血管性痴呆 (VD) 12例, アルツハイマー型老年痴呆 (SDAT) 16例, および対照例 (C) 15例を検索した. 左室機能の評価はMモード法に基づき, 左室拡張末期径 (以下LVDd), 左室収縮末期径 (LVDs), 左室内径短縮率 (FS), 左室1回拍出量 (SV), 左室駆出率 (EF), 心拍出量 (CO) を用いた.
結果は, (1) LVDd: BDではCに比べ有意に拡大していた. (2) LVDs: BDでは他の3群に比べ有意に拡大していた. (3) FS: BDではSDATおよびCに比べ有意に低下していた. またVDではCに比べ有意に低下していた. (4) SV: 各群間に有意差は認められなかった. (5) EF: BDでは他の3群に比べ有意に低下していた. またVDではCに比べ有意に低下していた. (6) CO: 各群間に有意差は認められなかった.
脳血管性痴呆, 特にBDでFS, EFが低下していた事は, 潜在性の左室機能低下を表すものとして, 患者の予後を推測し, 治療および予防を行う上で重要である.

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