日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
非ステロイド性消炎鎮痛薬 (NSAIDs) が原因と考えられた出血性大腸潰瘍の老年者5症例の検討
松井 豊松井 育子日下部 典生松村 暢子高橋 栄男森本 茂人荻原 俊男
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1997 年 34 巻 9 号 p. 748-754

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抄録

非ステロイド性抗炎症薬 (Nonsteroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs) が原因と考えられる大腸潰瘍による突然の下血を呈した5症例を経験した. 5例はいずれも老年者であり, 腰背痛, 関節痛に対してNSAIDsが投与されていた. また4例は糖尿病を合併していた. いずれも, NSAIDs投与6日以降より食欲不振を呈し, その後, 下痢症状を呈するが, 重度のものではなく, 自他覚症状とも強くなかった. 血便, 下血は下痢症状出現時から1~17日後に生じた. 緊急大腸内視鏡検査の所見は, 脾彎曲部を中心に, 5例中1例は粘膜びらん, 4例は潰瘍を呈し, 出血を伴っていた. また, 緊急胃十二指腸内視鏡検査は, いずれも出血を伴う急性胃粘膜病変を呈していた. いずれも原因薬剤の中止, 絶食, 中心静脈栄養, 輸血などの処置にて比較的速やかに治癒した.

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